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細見谷渓畔林と十方山林道

2004年(平成16)の活動記録

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環境保全調査検討委員会始まる
- 林道工事の実施に伴う影響の予測・評価及び保全措置を専門的、学術的な見地から検討するために開催 -

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西中国山地ブナの森づくり

(有)村上造林さんの借地

「もみの木森林公園」東隣り(1996年植林)と中津谷川沿い(1997年植林)は、そろそろ下草刈りは必要ないだろうということです。昨年植えた「もみの木森林公園」隣りの分は村上さんのところで下草刈りを行っていただきました。

猪山の借地

今年の管理は猪山のみに集中することができました。全体的には、猪山の植林地が一番成長がよく、背丈ほどに育ったトチノキもたくさんあります。しかし、道路に一番近いところは、ほとんど枯れてしまいました。今後も手を入れていく必要がありそうです。

環境保全調査検討委員会(第1回~3回)

環境保全調査検討委員会とは

環境保全調査検討委員会は、十方山林道(細見谷林道)の大規模林道化の是非をめぐる検討のため、緑資源機構によって今年春設置されました。つまり、「既設の十方山林道(未舗装)を、緑資源幹線林道事業(いわゆる大規模林道事業)に組み込んで拡幅舗装化すること」のメリット・ディメリットを検討するための委員会です。

同機構では、その目的を「(細見谷における)林道工事の実施に伴う影響の予測・評価及び保全措置を専門的、学術的な見地から検討するため」としています。

検討委員会設置のきっかけとして、昨春の日本生態学会による要望書をはじめ、さまざまな組織・団体から工事中止の要望を受けたことが影響しているのは間違いありません。

ところで、委員会の正式名称は「緑資源幹線林道大朝・鹿野線戸河内・吉和区間(二軒小屋・吉和西工事区間)環境保全調査検討委員会」です。

つまり、「緑資源幹線林道」(全国7林業圏域、32路線)の中の一つとして、「中国山地、山陽ルートの一部」の「大朝・鹿野線」があり、「戸河内・吉和区間」はそのうちの一部区間です。さらに「二軒小屋・吉和西工事区間」というのは、「戸河内・吉和区間」を2つに分けた後半部分で、ちょうど十方山林道に相当する部分のことです。(計画延長約13.2㎞)巻末資料参照。。

なお、委員会の構成委員(中村慎吾・座長)は、石橋昇(広島大学名誉教授)、鳥居春己(奈良教育大学自然環境教育センター助教授)、中村慎吾(比婆科学教育振興会事務局長)、波田善夫(岡山理科大学総合情報学部教授)、日比野政彦(日本鳥類保護連盟・日本鳥類標識協会会員)の5名となっています。

第1回検討委員会(6/4)

発足および第1回目の委員会(6/4)は、広島市内で非公開にて実施されました。中国新聞記事(2004年6月5日付け)によれば、「八月末までに三回程度開き、結論を出す」ことになっていたようです。「本年度に予定していた着工を遅らせて調査などにあて、来年度の本格着手を目指している」(同記事)というのです。

これに対して、中国新聞記事(2004年6月26日付け)は、「(緑資源機構の調査で)ルート沿いに確認した動植物の重要種六十種のうち、環境省の絶滅危ぐ種クマタカをはじめ十八種について生息環境への影響があると予測していることが、公開された環境保全調査報告書案で分かった」としています。こうした事実を踏まえて、科学的な議論が展開されることが望まれます。

ところで、この報告書案自体は、6月4日の第1回検討委員会(非公開)でもすでに示されていたものです。その時に、委員からは注文が相次いだようです。中国新聞記事(2004年8月24日付け)の見出しの一部は、「環境委で異論続出、来年度着工は微妙に」となっています。

複数の委員が「機構側の環境保全調査の不十分さ」(同記事)を指摘、さらに「環境への影響はおおむね「軽微と予測される」」(同)という機構側の判断根拠を具体的に示すことを求めた、としています。

機構側で改めて資料の準備をするなどしたため、2回目の委員会開催は9月にずれ込むことになりました。

第2回検討委員会(9/11)

第2回目の委員会(9/11)は、”いこいの村ひろしま”(山県郡安芸太田町)で開かれ、一般市民の傍聴が可能でした。しかしながら、話を聴くことができたのは、資料の説明とそれに対する委員の質問の合わせて1時間のみでした。その後引き続いて行われた肝心の審議(2時間程度)では、「希少生物に関する情報がある」という理由で退席させられてしまいました。

なお、中村慎吾座長はこの時に「この委員会では林道の是非についての審議は任されていない」、あるいは「林道建設を前提とした検討委員会である」という発言をしています。これは非常に問題のある発言です。

なぜならば、環境保全調査検討委員会の目的は「(細見谷)林道工事の実施に伴う影響の予測・評価及び保全措置を専門的、学術的な見地から検討する」ことにあるからです。したがって、科学的な検討を行った結果「環境保全は困難と検討委員会が結論を出せば計画は中止する」(廿日市市議団に対する林野庁説明1/11)のが当然です。

さて、中国新聞記事(2004年9月12日付け)によれば、「機構側は十月にも報告書案を公表し、意見募集やヒアリングを経て年内決着の予定だった」ようです。しかし、同記事では「来年度着工を前提とした報告書案に対して、委員からは再調査などを求めるなど厳しい声が相次いだ。同機構は、さらに修正を迫られることになり、目指していた年内の結論は微妙になってきた」としています。

ところで、第2回委員会から「委員会は原則公開」として傍聴席を設けることが決まりました。その背景には、日本生態学会のアフターケア委員会(豊原源太郎委員長)が5月に提出した要望書があったようです。中国新聞記事(2004年9月8日付け)

第3回検討委員会(11/9)

第3回目の委員会(11/9)は、広島市内で開かれました。中国新聞記事(2004年11月10日付け)によれば、「委員から生態系全体への配慮をさらに求める意見や、林道が必要な理由をあらためて問う声」(同記事)が出ています。ところで同日機構側から、「報告書案を公表し意見を募る」ことが明らかにされました。「来年度着工を前提とした手続きの一つ」(同)だそうです。

同委員会を傍聴あるいは議事録閲覧によって生じた疑問を受けて、研究者グループから環境保全調査検討委員各位に対して、公開質問状が提出(11/28付け)されました。委員会委員一同として回答はありました(12/7付け)が、内容には特に見るべき点はありません。

上記の意見書提出(提出期間2004年12月2日~22日)を求める措置に対しては、合計32件の意見書(森水の会会員多数を含む)が提出されました。なお、第3回委員会開催のことを私たちは直前まで知りませんでした。だれに対しても事前の通知は全く行われなかったようです(第2回のときは案内がありました)。

林野庁検討委員会の報告書

林野庁では、全国7林業圏域全体の見直しを行っており、その報告書の一部が中国新聞記事(2004年2月13日付け)に載りました。「大規模林道、未着工区間4割を中止」という小さな見出しの内容を読んでみると、大朝・鹿野線の吉和区間(2.3km)が含まれているではありませんか。

ついにやったか?と思ったのですが、よく聞くと、「吉和から六日市に抜ける区間」の話だということでした。発表の仕方(あるいは新聞の書き方)が悪かったのでしょうか。いずれにしても、大朝・鹿野線の全線をつなぐ路線はもうできなくなったわけですが。

なお、今回中止の対象となった区間は、当初の計画延長2,488kmからみれば、わずか4.6%にすぎない距離に相当します。

今年の植物調査はどうだった?

遺伝子調査を行う

今年の植物調査は、5月(3~5日)と6月(5~6日)の2回行いました。6月の植物調査では、林道沿いに100m×20mの区間を区切り、主要な樹種(ブナ、イヌブナ、トチノキ、サワグルミ)すべての位置を地図に落とし込んで行きました。

そして、樹種名、幹径(胸高直径)を記録した上で、各樹木の芽を一つか二つ採取します。これを遺伝子解析することによって、樹種同士の親子関係や森の成り立ちを調べることができるのだそうです。

巨樹にびっくりする

十方山林道沿いの植物の種類は400種を超えてきました。中でも特筆すべきは、サルナシ、ヤマブドウなどで記録的な大きさのものがあることです。今年2回ともご指導いただいた米澤信道さんによれば「ギネス級のつる性植物」とのことです。

なお、2回の植物調査ともに、宿泊には広島山稜会(堀啓子・森水会員所属)の「ひえばた小屋」を利用させていただきました。ランプの光が何とも言えない雰囲気を醸し出し、翌日の調査に差しさわりが出ない程度で会話を打ち切るのにひと苦労しました。

2004年年表

-2月15日(日)、森と水と土を考える会、総会
話題提供/細見谷に通い続けて見えてきたこと(金井塚務・広島フィールドミュージアム会長)
(カトリック観音町教会・ヨゼフ館2階、広島市西区観音町)
-3月6日(日)、ひろしまの「生命(いのち)の森」・細見谷渓畔林 その未来を問う
2003年度WWF自然保護助成事業「西中国山地・細見谷上流部の渓畔自然林の生態学的評価と十方山林道の大規模林道化による影響について」-成果報告会、WWFJ(財団法人・世界自然保護基金ジャパン)
主催/森と水と土を考える会
–自然保護助成事業実施への経緯/森と水と土を考える会
–かけがえのない水源の森・細見谷渓畔林
河野昭一/明らかになり始めた渓畔林の重要性と、それを破壊しかねないこの国の林野行政
米澤信道/生物多様性の宝庫・細見谷渓畔林
–細見谷に通い続けて見えてきたこと
金井塚務/ケモノたちの暮らし・「大規模林道化」の危険性
–細見谷の地質について
古川耕三/現地は地滑りの巣、林道建設には不適当
–ディスカッション・メッセージ採択/森と水と土を考える会
この森を子々孫々へ-私たちは何をすべきか-
(広島平和記念資料館、東館地下1Fメモリアルホール、広島市中区中島町)
-3月28日(日)、シイタケのコマ打ち、山口さん宅(広島市東区福田)
-4月4日(日)、春の植林(戸河内町猪山)
-4月11日(日)、デポジット法勉強会
拡大生産者責任(EPR)とデポジット制度、容器包装リサイクル標の改正に向けて、講師/井口博さん(弁護士、東京ゆまにて法律事務所)
主催/デポジット法制定ネットワーク広島
(WEプラザ(広島市女性教育センター)、広島市中区大手町)
-5月3~5日(祝)、十方山林道植物調査
指導/米澤信道さん
-6月4日(金)、第1回環境保全調査検討委員会(非公開)広島市内
-6月5~6日(土・日)、十方山林道植物調査
指導/河野昭一、米澤信道の各氏
-6月5日(土)、環瀬戸内海会議
フォーラム/よみがえれ「瀬戸内海」瀬戸内法改正運動の前線から
(香川県民ホール、高松市玉藻町)
-6月6日(日)、アースデイかがわin豊島
主催/アースデイかがわin豊島実行委員会
-6月12~13日(土・日)、大規模林道問題全国集会(第12回)
主催/大規模林道問題全国ネットワーク
(日本教育会館、千代田区一ツ橋)
-7月31~8月1日(土・日)、猪山一泊交流会
31日:地元の方々と交流会
1日:猪山植林地の草刈り
-8月29日(日)、吉和の苗畑手入れ
-9月11日(土)、環境保全調査検討委員会(第2回)
(いこいの村ひろしま、安芸太田町)
-10月14日(木)、瀬戸内法改正キャラバン、交流会
主催/環瀬戸内海会議
(西区民文化センター、広島市西区横川新町)
-10月16日(土)、猪山の神楽観賞
-11月7日(日)、秋の十方林道ウォーキング
吉和西~祠~下山橋~水越峠~二軒小屋
-11月9日(火)、環境保全調査検討委員会(第3回)広島市内
##忘年会等、最終号不明?##
-11月28日(日)、シンポジウム「細見谷渓畔林の保全に向けて」
主催/廿日市・自然を考える会
共催/広島フィールドミュージアム
協力/森と水と土を考える会、細見谷流域研究者グループ
–大規模林道中止要請の署名提出その後
報告/廿日市・自然を考える会
–最新の細見谷調査報告
講師/金井塚務さん
–パネルディスカッション「細見谷の保全に向けて」
司会/安渓貴子、パネリスト/河野昭一、安渓遊地、金井塚務の各氏
(廿日市市商工保健会館 交流プラザ、廿日市市本町)

2000年に「原則7mで2車線」の同林道の規格を外し、現地を通る未舗装の十方山林道を原則的に拡幅せず舗装する計画に変更した。

富士ゼロックス端数倶楽部、20万円の助成金(今年2004年度)
2002年11月にも同額をもらっている

〇〇新聞記事・時想、2004年7月25日(日)
京都大学名誉教授・河野昭一
細見谷の森、西南本州一の命の宝庫

自然植生、日本列島の20%を割っている
「十方山林道沿線の多様な生き物たちの世界は、西南本州随一といっても過言ではない」
毎日新聞記事、2004年8月23日付け
朝日連峰・大規模林道
「朝日連峰(山形、新潟)の山形県部分に建設が計画され、98年に建設中止が決まった旧大規模林道・朝日-小国区間(64.2km)で、昨秋までに整備が完了し供用されていた計14㎞が7月の集中豪雨の影響で大規模な路面崩落などが相次ぎ、全線不通になっていることが分かった」。

原啓一代表
「建設中から雪解けや大雨のたびに崩壊し、数億円もかけた補修工事を繰り返している。災害の多い危険な道路ということが改めて裏付けられた」

広島フィールドミュージアム
リーフレット「細見谷渓畔林」作成

河野昭一監修
「植物生活史図鑑〈1〉春の植物No.1 」北海道大学図書刊行会(2004年)

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