地図とコンパスの使い方

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ひろしま百山(私の踏跡)>> 山行の小道具

地図とコンパスの使い方

本稿の内容は、2006年6月現在のものです。現在の地理院地図(電子国土Web)などの情報は含まれておりません。ただし、リンク先情報(例えば薬師岳遭難事件など)は増補改定している場合があります。(その他、簡単な動画作成検討中)

  • 登山者のための地図とコンパスの使い方、横山雄三著、成山堂書店(2003年)

2006年04月21日(金)、「登山者のための地図とコンパスの使い方-あなたの方法は間違っている-」成山堂(2003年)の著者横山雄三氏から1通のメールを受け取った。我がHPの「地図とコンパスの使い方」の中に、根本的な考え方の誤りがあるとのご指摘である。それをキッカケにこのページを全面的に書き直すことにした。その間横山氏からは、数度にわたり懇切丁寧なメールでご指導をいただくことができた。ここに感謝申し上げます。

2006/05/04、リニューアル完了(5月6日、最終決定稿)
2006/04/26、本ページ大幅リニューアル開始
2005/12/24、アマゾンレビュー転載
2005/10/15最新、地球の北は"S"極であり、"N極"ではない
メールでのご指摘を受けて上記の通り訂正する
(ただし、この表現方法は学術的には必ずしも正確ではない。くわしい説明は他書籍等にゆずることとし、リニューアル版ではこの項を削除した。)
2003/04/01最新(磁北線の引き方、増補)
2002/12/28最新(円周率3?、追加訂正)
2002/04/17初出

このページの目次です

はじめに

山行に地図とコンパスはかかせない

山行の安全にとって最も大切なこと、それは、"現在位置の確認"作業を決しておろそかにしないことである。

そのためのツールとして、地図とコンパスが必須である。具体的には、二万五千分1地形図(国土地理院)と回転盤付きオリエンテーリング用コンパス(シルバ社製など)の二つをセットで使いこなすことが求められる。

山に入ったなら、地図の上で自分は今およそどの辺りにいるのかを知り、さらに、どの方向に進もうとしているのかを常に考えながら行動することが大切となる。

その上で、必要に応じて現在位置をきちんと確定しながら進まなければならない。地図とコンパスは、こうした作業をするために必要不可欠かつ簡便な道具である。この二つをセットで使いこなすことによって、山行は限りなく安全で楽しいものとなるだろう。

サイト内関連ページ

  • 愛知大学山岳部薬師岳遭難事件/Akimasa Net
  • 乳頭山遭難43名/Akimasa Net
  • 円周率3?/Akimasa Net
    ゆとり教育で計算力は維持できるか
  • 日航ジャンボ機墜落事故/Akimasa Net

参考:
上記の「タイトル+/Akimasa Net」の部分を、一行丸ごと「コピー&ペースト」すれば、検索できます。

参考図書

  • 最新地形図入門、五百沢智也著、山と渓谷社(1989年)
  • 2万5千分の1 地図の読み方、平塚晶人著、小学館(1998年)
  • 道迷い遭難を防ぐ 最新読図術、村越真著、山と渓谷社(2001年)
  • 地図の読み方がわかる本、梶谷耕一著、地球丸(2001年)
  • 登山者のための地図とコンパスの使い方、横山雄三著、成山堂書店(2003年)
  • 山岳地形と読図、平塚晶人著、山と渓谷社(2005年)

現在の国土地理院地形図は、空中写真測量によって作成される。そこでは、まず最初に空中写真撮影を行い、それをもとに図化機を使って等高線等を描いていく。その等高線に関して、最近ではほぼ完璧に信頼できるレベルに達しているといわれている。

それと比べて、登山道はかなり正確さに欠ける場合が多い。森の中は空中写真には写らないため、細い山道まで把握することが困難なためである。そこで地図とコンパスを持ち、山の地形を全身で感受しながら歩くことによって、登山道の微妙なズレをもしっかり把握できるようになれば、ますます安全で楽しい山行になることだろう。

現在位置を簡単に確認する道具として、最近ではGPS(衛星を使った位置捕捉装置)の性能が著しく向上している。しかし、沢の中や深い森の中では衛星を捉えることができない、あるいは電池切れの心配など、GPSにも欠点はある。今後とも地図とコンパス(アナログ装置)の必要性がなくなることは決してあり得ないと考えられる。

愛知大学山岳部パーティ13人の場合

地図とコンパスを持たなかった悲劇として、「愛知大学山岳部薬師岳遭難事件/Akimasa Net」があげられる。

1963年(昭和38年)1月、正月登山として薬師岳 2926.0m(富山県)の山頂を目差した愛知大学山岳部13人のパーティは、後に ”サンパチ豪雪” と名付けられた豪雪吹雪の中で山頂を目前にして登頂を断念した。そして、太郎小屋へ向けて引き返す途中で、正しいルートから90度ずれている東南尾根に入りこんでしまった。パーティの中に地図とコンパスを携行している者はだれ一人いなかった。そして13人全員が遭難死した。

秋田県の中高年登山愛好グループ43人の場合

一度見失った現在位置を、もう一度把握し直すことはそれ程簡単なことではない。

「乳頭山遭難43名/Akimasa Net」を参考にこのことを少し考えてみよう。2005年3月末、秋田・岩手県境の乳頭山(烏帽子岳1477.5m)に日帰り登山で出かけた秋田県の中高年登山愛好グループ43人が、吹雪のため登頂を断念して下山途中ルートを見失い、一夜を雪中で過ごすという事件が起きた。幸いなことに、翌日岩手県側の雫石町で全員無事保護され一件落着となった。

地図とコンパスは持っていたのだという。しかし、実際にそれを使うことはなかった。理由は簡単である。「幾度となく登っている乳頭山だ。吹雪の中を下山するにしても、わざわざ地図とコンパスを持ち出すまでもない」と考えたからだ。

しかし、やがて正規の登山道を外れておかしいと気づいた時、ホワイト・アウトした中で目標物は何も見えず、コンパスは何の役にも立たなくなってしまっていた。そして完全なロスト(道迷い)状態となり、予定外のビバークを余儀なくされた。

やむなく山中で一夜を過ごすことになったものの、少なくとも秋田県側に下山していると誰もが信じていた。ところが、いつの間にか意図した方向とは真反対の岩手県側に入り込んでいたのである。だれ一人としてそのことに気づいていたものはいない。

したがって、携帯電話で時々もたらされる位置情報は全くデタラメなものとなり、捜索隊を混乱させてしまった。山に入ったならば、地図の上で自分は今およそどの辺りにいるのかを、常に把握しながら行動する必要がある。

二万五千分1地形図を用意する

  • 地図を用意する(二万五千分の1国土地理院地形図)
  • 地図に磁北線を引く(分目盛を利用して、先に真北線を引いておくとよい)
  • コンパスを用意する(回転盤つきオリエンテーリング用長尺コンパス)
  • コンパスを目標物に向ける(コンパスに"方位角"をセットする)
  • 地図上でコンパスを操作する("位置の線"の獲得、現在位置の推定)
  • 複数の情報から現在位置を確定する
  • 進むべきルート、方角を確認する

二万五千分1地形図を選ぶ

国土地理院”地形図”には、一万分の1地形図、二万五千分の1地形図、そして五万分の1地形図の三種類がある。五万分1は、明治23年(1890年)から陸軍参謀本部陸地測量部によって作成が開始され、昭和初期には一部を除きほぼ完成をみている。二万五千分1は、五万分1の後を追って 昭和39年(1964年)から改めて測量作業を開始し、昭和59年(1984年)に日本全土をカバーした図の刊行を完了している。

二万五千1は、五万分1よりも精度がすぐれている。例えば標高の表示は、五万分1(20m毎)、二万五千分1(10m毎)である。したがって、登山用には2万五千分1を用いるべきであろう。欠点として、五万分の1地形図1枚の範囲をカバーするには、4枚の二万五千分1を用意する必要があり多少わずらわしいものの、利点の方がはるかに大きい。

その他一万分1地形図は都市部のみカバーしている。なお、これら”中縮尺”の地形図より小縮尺の二十万分1は、地形図とはいわず”地勢図”と呼ばれている。(以下、「地形図」とは、特に断らない限り、二万五千分の1地形図(国土地理院)を指す)

縮尺について

”大縮尺”の地図の方が、”小縮尺”のものより詳細な地図だといえる。そして、大小縮尺の考え方は、小数点に直してみると分かりやすい。

二万五千分1=0.00004(小数点以下5桁)
20万分1=0.000005(小数点以下6桁)
二万五千分1は、20万分1より大縮尺である。
20万分1は、二万五千分1より小縮尺である。

磁気偏角(磁針偏差)

磁気コンパスの“赤”針(磁針の北端-N極)が指し示す方向、つまり”磁北”は、”真北”とは完全に一致することなく、少し角度が生じる。この角度(ズレ)のことを磁気偏角(磁針”偏差”)といい、日本では“西”に5度( 九州)から10度(北海道)ズレている。

広島市中心部ではその値が約6度40分となり、二万五千分1地形図「広島」の右側、記号覧の下に、”磁針方位は西偏約6°40′”と表記されている。

地図とコンパスをセットで使う場合、地図上に”磁北線”(磁北の方角を示す線)を記入しておく方が圧倒的に使い勝手が良くなる。磁北線を引いていない地図を使う場合には、コンパスで確認した方位(磁北からの角度)を、その都度真北を基準とする値(偏差分を+-する)に置き換えなければならないので、毎回その分の手間がかかることになる。

真北線を引く(推奨)

二万五千分1地形図の大きさは、46×58cmで(柾版・まさばん、A2より少し大きい)、図郭(地図本体)とその外側余白部分(整飾)でできている。

図郭の大きさ(範囲)は、経度で7分30秒(横、東西方向)、緯度で5分(縦、南北方向)と決まっており、実際の緯度経度の値は、図郭の四隅に表示されている。

二万五千分1地形図「広島」の場合、底辺(左下:東経132度22分30秒、北緯34度20分~右下:東経132度30分、北緯34度20分)、上辺(左上:東経132度22分30秒、北緯34度25分~右上:東経132度30分、北緯34度25分)となっている。

ただし、ここに示した値は、明治以来の日本の測地基準系である日本測地系Tokyoによるもので、最近では、新しい日本測地系2000(世界測地系)による値も併記されている。

さて、図郭の一番外側を細い線(図郭線)が囲んでおり、さらにその外側には、分目盛(ティックマーク)が非常に短い黒線で1分毎に表示されている。

上下左右の同緯度あるいは同経度同士のティックを結べば、 緯度経度1分ごとの格子(メッシュ)が出来上がる。これらは、GPSで測定した緯度経度を地図に落とし込むときの基準線として使用できる。ここで、横線同士(緯度線)は平行である。そして、縦線(経度線)は左右の図郭線も含めて”真北線”となる。

日本の地形図(国土地理院)では、U.T.M(ユニバーサル横メルカトル:Universal Transverse Mercator)図法が使われている。そして当然ながら、高緯度地方ほど緯度線は短くなる(北極ではゼロになる)ので、図郭線の上辺は下辺よりも短くなる。またこの図法の結果として、図郭線の右辺と左辺の長さも実は同一とはならない。

つまり、地形図における図郭の四辺の長さはすべて異なっていることになる。なお、地球は真円球ではなくわずかにひずみがあるため、図郭の縦線(真北線)の長さも図葉(一枚の地形図)毎にわずかに異なる。

これらの値は、地形図右側、行政区画図の四辺に記されている。例えば「広島」の場合、下辺46.02cmに対して、上辺45.97cmであり、約0.1%短くなっている。左右辺は、36.98cmで同じ値である(ただし、概数として同じになっているだけで、厳密には同一ではない)。

日本全土をみた場合、例えば、「与那国島」の下辺50.69cmに対して、「宗谷岬」では上辺39.00cmであり約23%も短くなっている。また左右辺も、「与那国島」36.90cm、「宗谷岬」37.03cmであり、約0.35%の違いがある。

ただし、山行で地形図を利用する場合、緯度・経度線は、お互いに直交していると考えて何ら問題はない。

世界測地系による地形図

世界測地系の採用により、地形図そのものが順次新しいものに置き換えられつつある(2006年5月現在、数はまだ少ない)。

例えば、新しい2万5千分1地形図「広島」は、平成17年6月1日発行1刷として、書店等で入手できるようになっている。その特徴として、図葉ごとの図郭そのものが広くなっており、隣接図の図郭との重なり部分を表示するようになっている。そして、分目盛は世界測地系(日本測地系2000)のみで表示されている。

なお、日本測地系 Tokyoによる地形図の図郭の位置も、隣接図の図郭の位置(新設)とともに、図郭線外にプロットされている。(図郭縦線の長さ、41.92cm)

地形図の基準として、
1.経緯度の基準は世界測地系
2.日本測地系への変換は、経度に+9.0秒、緯度に-11.7秒を加算する
7.磁針方位は西偏約6°50′
(Web作者注:従来よりも、10秒増加している)
など

磁北線を引く(必須)

磁北線を引くために、回転盤付きコンパス(あるいは分度器)を使うのは最も手軽な方法である。広島における西偏6°40′の40′とは40分のことで、60分が1度だから、分度器での角度 6.67度くらい磁石の針が西に傾くということを意味している。この角度を約7度として作図しても大きな誤差は生じないだろう。

ルート上で、緯度経度1分毎のメッシュの交点から、上に延びる真北線を基準として、西(左)へ7度のところに線を引けばよい。もし、1分毎メッシュを作成していない場合には、図郭線(右辺)そのものを真北線として同様に作図をすればよい。

しかし、ここはより正確に、しかも簡単に磁北線を引くために三角関数(タンジェント)を使ってみることにしよう。結論からいうと、旧版図葉の場合、

tan6度40分 = 0.116883 ≒ 43.2/370

1)tan(Var)、2)10×tan、3)20×tan、4)200×tan、5)370×tan、6)420×tan
1度00分、0.017455、0.17、0.35、3.5、6.5、7.3
2度00分、0.034921、0.35、0.70、7.0、12.9、14.7
3度00分、0.052408、0.52、1.05、10.5、19.4、22.0
4度00分、0.069927、0.70、1.40、14.0、25.9、29.4
5度00分、0.087489、0.87、1.75、17.5、32.4、36.7
6度00分、0.105104、1.05、2.10、21.0、38.9、44.1
6度10分、0.108046、1.08、2.16、21.6、40.0、45.4
6度20分、0.110990、1.11、2.22、22.2、41.1、46.6
6度30分、0.113936、1.14、2.28、22.8、42.2、47.9

6度40分、0.116883、1.17、2.34、23.4、43.2、49.1
6度50分、0.119833、1.20、2.40、24.0、44.3、50.3
7度00分、0.122785、1.23、2.46、24.6、45.4、51.6
8度00分、0.140541、1.41、2.81、28.1、52.0、59.0
9度00分、0.158384、1.58、3.17、31.7、58.6、66.5
10度00分、0.176327、1.76、3.53、35.3、65.2、74.1
20度00分、0.363970、3.64、7.28、72.8、134.7、152.9

(横山雄三2003、P.005、偏差タンゼント表改変)

したがって、”西偏6度40分”の地域では、図郭内のある一点 ”A”、例えば右下隅から、右辺の図郭線(真北線)上で約370mmあがり、そこからさらに左(西)へ上辺の図郭線上で43.2mm行った地点 ”B”を求め、AB間に引いた線が磁北線となる。分目盛を利用して図郭中に真北線を引いている場合には、その真北線毎に同様の作図が可能となる。

なおこの作図の前提条件として、右辺の図郭線の長さ370mm、そして右辺と上辺の図郭線でできる角度は90度(直角)としている。

また、上記タンジェント表で示されていない値を求めるには、度数間の差分を比例配分すればよい。具体的には、偏差が10分増加するごとに、"1.1"づつ加えるということでよいだろう。参考:磁北線の引き方詳細、横山雄三2003、P.006

あとは、この磁北線と平行に何本かの線を"ルート上"に記入しておくとよい。最初に引いた線と平行に引く線の間隔を4cm(あるいは2cm)とすれば、それは実際の水平距離1km(あるいは500m)を示すことになる 。

地図への書き込みは厳禁

例えば、”(登山)道を鉛筆やボールペンでなぞると、・・・曲がり方が必要以上に大きく見えることがあるのです。・・・どうしてもルートをペンでなぞりたいなら、蛍光ペンでなぞるのがベストです。蛍光ペンなら下が透けて見えるので、錯覚を起こしにくいからです”参考:地図への書き込みは厳禁、平塚晶人1998、p.145。

ただし、当Web作者の経験によれば、蛍光ペンのなだらかな流れの下に微妙な登山道の変化が隠れてしまい、ルート選択に苦労した経験がある。同書p.146にも、”地図はあるがままのまっさらな状態で見るのがいちばんです”とある。

地図を読む

地形図には、ある地域における“地形”が正確な縮尺で表されており、その上に地名等の情報が記入されている。そして、図の上方向が“真北”(北極点の方向)を示している。コンパスで磁北を知る。そして、磁北線を引いた地図を北向きに正しく置いて(“正置あるいは整置”して)、まわりの地形と地図を見比べて現在位置を知り、そして行くべき方向を考える、というのが野外での地図の基本的な使い方とされているようである。

正置あるいは整置の限界

”実際にこの方法でやってみると、多少角度に誤差のある尾根でも、合っているように見えてしまうのです。しかし、地図読みで必要とされる方向の確認は、そんな大まかなものではありません。ここは厳密に考える必要があります。”

平塚晶人1998、p.156。目標物に対するわずかな角度の違いをも見逃さないためには、”回転盤付き”の長尺コンパス(シルバ社製などのオリエンテーリング用コンパス)を地図とセットで正しく使う技術が求められる。

現在位置を確定する

現在位置を把握するためには、「現在位置と目標物を見通す線」と「真北の方角(正確には磁北線)」でつくる角度を知ることが必要である。すなわち、目標物の<方位角>を正確に知ることが大切であり、そのために “回転盤(リング)付き”コンパスを使うことになる。

(1)測定目標物の選択

真横にあり、近くで目立つものがよい:

方位測定に誤差は付き物である。普通のOLコンパスでは、プラスマイナス2度(合計4度) 程度の測定誤差は避けられない。また、同じ<角度誤差>であっても、対象となる目標物によって<位置誤差>に大きな差がでてくる。そこで、目標物の選択では以下のことに注意する必要がある。
参考:近い直角方向の目標、横山雄三2003、p.148

まず、まわりの景色の中から、特徴的な地形(あるいは人工物)を選んで目標物とする。その目標物はできるだけ近くのものがよい。近くにある目標ほど、少し位置がずれただけでも角度に大きな違いがでてくるからである。

たとえば、街中を歩いている時のことを想像してみよう。最初、右前に見えた建物が、やがて真横になり、そして後に去っていく。この間歩く距離はせいぜい100m単位だ。わずかな距離の移動につれて、建物の見える方角はどんどん変化していく。この角度を測定することによって、多少の誤差はあったとしても、 現在位置を正確に求めることができる。

先ほどの偏差タンジェント表を用いて、角度誤差を"2度"とした場合の位置誤差についてもう少しみてみよう。目標物までの距離を20mとしたとき、位置誤差は約0.70mとなる(20×tan"1"度の値0.35を2倍する)。

さらに10倍の200m先では、位置誤差も10倍となって7.0mまで広がる。20m先の目標物を測定して7.0mもの誤差を生じる時の角度誤差は約20度近くあり、通常では考えられない誤差である。

つまり、角度誤差が同じとするならば、近くにある目標物ほど位置誤差は少なくなる。現在位置の確定のためには、できるだけ近くにある目標物を選択することが大切だということがよく分かる。

実際の山行においては、一つ谷を挟んで向こう側の特徴あるピークなどが、絶好の目標物となる。角度誤差を許容範囲一杯の4度とすれば、500m(地形図上の20mm)で約35m(同じく1.4mm)程度の誤差となる。

これが2.5km(地形図上の10cm=コンパスの長辺の長さ)先の目標物を選んだならば、位置誤差も5倍の約175m(同じく7.0mm)まで拡大する。
参考:OLコンパスの長辺の長さ100mmについての誤差の表
横山雄三2003、p.112

参考程度

誤差範囲を二等辺三角形で示す。頂角が角度誤差に相当し、底辺は位置誤差をあらわす。ここで、頂角の二等分線は底辺を垂直に二等分する。その結果、角度誤差の半分の大きさの頂角をもった相同の直角三角形が2つできる。これにタンジェント表の数値を当てはめて、角度誤差に対する位置誤差の大きさを計算する。

距離20m、誤差角度"2度"の場合、まず20×tan値"1度"の値0.35を選ぶ。位置誤差(底辺の長さ)はその2倍なので、0.35×2=0.70mとする。また、距離500m、角度誤差"4度"の場合の位置誤差は、次のようにして計算する。まずtan(var)"2度"の値 0.034921を500倍して17.46を得る。"4度"での位置誤差は、この値をさらに"2倍"して約35mと求まる。

さて、目標物は進行方向とできるだけ直角の位置にあるものがよい。方位測定の角度に同じ程度の誤差があるとするならば、ルートと同方向にある目標物ほど、同じ角度誤差でも位置誤差の範囲は大きくなるからだ。

極端な話、ある一点に向けて直線的に延びているルート上での測定では、たとえ角度誤差ゼロであっても、位置の誤差は無限大にまで拡がる。

(2)目標物の方位測定(コンパス操作)

実際にコンパスを操作する

1) OLコンパスの大矢印(長辺)を"目標物"に向ける
2) 回転盤の赤矢印を磁針(磁北を指す赤針)と重ね合わせる

これだけの簡単な操作によって、磁北線と目標物でつくる角度(方位角)をコンパスに覚えこませることがでる。そしてこの状態を「コンパスをセットした」という。

なお、OLコンパスの回転盤(リング)は、滑らかに回転しやすく、しかも一度セットしたならば簡単にはズレない仕組みになっている。方位角をセットしやすく、しかもその状態を保ったまま、次の地図上での操作を行いやすくするためである。

コンパスのかまえ方が大切

正確な測定のためには、まず最初に、目標物を体の正面にしっかり見据えて立つことが大切である。そうしておいて、水平に重ねた両手の上でコンパスをかまえる。

両手を水平に保つには、背筋を伸ばして脇を締め、ひじを90度にするとよい。この時、コンパスの位置は"お腹"の前になる。そして、方位角を計るには、「磁針の回転の中心の真上に利き目をおき、北を指す赤針と、回転盤上の矢印がピタッと合うように回転盤を回す」。参考:梶谷耕一2001、p.064。

これに対して、横山雄三著は「早撃ち式」を提唱している。上記の方法(正面式)では"目標を正確に狙うことができない"というのだ。

早撃ち式では、"目標を見ながら、視野の中にコンパスを配置し、(図13の「狙って」のように)人指し指を伸ばして長辺に添え、人指し指で目標を指すように狙います。そして、その姿勢で動かずに、左手で磁針にリングの矢印を合わせる・・・・・"横山雄三2003、p.032。

いずれにしても、OLコンパスによる方位角の測定誤差は、プラスマイナス2度(合計4度)までが許容範囲であろう。そのことを踏まえつつ、Web作者は上記方法による測定誤差を後日実地に検証してみたいと考えている。

なお、横山著の同一ページに、"狙ったら、リングを回す前に、落とした目線の長辺の延長上に目印を見つけて記憶しておき・・・"といった記述がある。

そして、この方法だけで測定するのを「垂下式」としている。目標物と目の前の目印を通る見通し線上でコンパス操作をすることは、できるだけ近い目標物を選択するという条件にも当てはまっている、と考えられる。

参考:コンパスにセットした方位角の数値(度数)は、プレート中央に引かれた縦線の基部で読み取ることができる。その位置に短線で特別な印が付けられた製品もある。 そして、この線のことを"度数線"といっている取扱説明書(取説)がある。

しかし、リングの周りに刻まれた「度数目盛」と混乱する用語であることは確かである。その他、取説によって、人によってコンパス各部分の用語は微妙に異なっているので、説明文を読むときには注意する必要がある。
参考:OLコンパス、横山雄三2003、p.030

(3)地図上の操作("位置の線"の獲得、現在位置の推定)

方位角をセットしたコンパスを使って、地図上で操作をする

3) 地図を広げる
4) コンパスの長辺の一端を、地図上の"目標物"にあてる
5) 目標物を支点にコンパス自体を回す
6) 回転盤(リング)の赤矢印が磁北線と平行になる位置を見つける
参考:地図操作(1)、横山雄三2003、p.034

この操作によって、測定した方位角と一致する1本のラインを地図上に引くことができる。「現在位置」はそのライン上、つまり、コンパスの長辺上(延長線上)のどこかに存在するはずである。このライン(線)のことを海事用語では「位置の線」 といっている。現在"位置"はこの線上にある、という意味だ。そして、この地図上での操作を「位置の線の獲得」(操作)という。参照:方位測定と位置の線、横山雄三2003、p.036

ここで、磁北線を引いた地図上で操作する限り、この作業のために地図を正置する必要はなく、作業に必要な部分を適当に広げるだけでよい。また、コンパスの赤磁針の位置も全く関係ない。このことは、以下の説明における地図上での操作において、すべての場合に当てはまることである。

現在位置の方が、目標物よりも確かな場合

3) 地図を広げる
4) コンパスの長辺の一端を、地図上の"現在位置"にあてる
5) 現在位置を支点にコンパス自体を回す
6) 回転盤(リング)の赤矢印が磁北線と平行になる位置を見つける
参考:地図操作(2)、横山雄三2003、p.035

目標物の方位角をセットしたコンパスを、地図上の位置が確定している"現在位置"において、上記と同様の操作を行う。獲得した位置の線の延長線上に目標物があるはずである。もしこの線上に「目標物」がないときには、測定ミスでない限り、"現在位置"を誤って認識している可能性があることを示している。

(4)クロスベアリング(現在位置の確定)

2本以上の"位置の線"をクロスさせる

位置の線の上で、現在位置はどこかを即座に確定することはできない。わかっているのは、「現在位置は"位置の線"上のどこかにあるはずだ」ということにすぎない。

しかし、別の目標物を選ぶことによって、異なるもう1本の位置の線を獲得することができるならば、これら2本の位置の線の交点を現在位置と推定することができる。さらに3本目の線が得られるならば、それらの交点は小さな三角形(誤差三角形)となり、その内心と思われる点が現在位置となる。

ただし、山行で"位置の線"を3本使うというのは現実的ではない。それよりも、1本毎の"位置の線"を確実にとらえることの方が重要 となる。

“尾根筋”は、通常は直線とはならず、右や左に振れながら続いているものだ。そこで、尾根は現在位置を確認するために非常によいポイントとなる。作業上の注意点としては、尾根筋を見とおせる地点で尾根をまたぎ(尾根に乗って)、しっかりと正面を向いて立つことである。ここで上記同様のコンパス操作をして方位角をコンパスにセットする。

地図上でコンパス全体を動かし(スライドさせて)、その方位角に見合う尾根筋を見つけることができれば、現在位置はその尾根上のどこかにあるはずだ。これもまた、位置の線を獲得するための操作であり、この場合には、目標物が点状のものから線状のものに変わっただけである。

尾根筋の位置の線に対して、別の目標物によって得られた位置の線をクロスさせれば、現在位置を確定することができる。また”沢筋”では、沢の向きと支沢の流れ込む方向の2本の位置の線などによって、現在位置を知ることができる。

(5)逆順のコンパス操作

地図上の目標物から現物を探し当てる

・地図を広げる
・コンパスの長辺の一端を、現在位置と目標物を結ぶ線上に合わせる
・回転盤(リング)の赤矢印が磁北線と平行になるまで回す

・コンパスごと体全体を回す
・回転盤の赤矢印を磁針(磁北を指す赤針)と重ね合わせる
・OLコンパスの”大矢印”(長辺)を、体の正面で目標物に向ける

地図上で方位角を入力したコンパスを使って、その方角に実際に目標物があるかどうかを確認する。目標物が見えれば、“推定”現在位置は正しいことになる。

もし、角度が違っているならば、その角度に見合う地点を地図上で特定しなければいけない。先ほどまでの手順が、まず見通し線の方位角をコンパスにセットして、地図上で位置の線を獲得したのに対して、ここでは、先に地図上で位置の線を獲得したコンパスを使って、その方角に実際に目標物があるかどうかを確認するという逆の手順となっている。横山雄三2003、p.039

(6)その他

測定精度について

尾根筋、沢筋を含んだ位置の線は、多少の誤差があったとしても、何とか対象物を探し出して当てはめることができる。逆順のコンパスで目標物を見つけ出す場合も同様だ。目標物周辺の様子を確認しながら作業をすればよいので、ある程度の位置誤差があっても修正できるからである。

これに対して、目標物から現在位置を確定するために獲得する位置の線は、できる限り測定精度をあげて誤差を小さくしなければならない。特徴のない海の上で船位を決定するのと同じ考え方が要求される。
参照:コンパスの用途による要求精度の相違、横山雄三2003、p.112-115
目標物の確認と現在地の確定の違い、同著p.114

現在位置の確定のために

正しい位置の線を獲得するためには、推定現在位置をある程度の範囲に収めておきたいものだ。そのためには、前回確定地点から、どの方角へどの程度の距離を歩いたのか把握しておくことが大切となる。

歩いてきた道は、尾根、沢あるいは斜面だったのか、斜面だとすれば、尾根は右手にあったのか、それとも左手だったのか、そして、登りだったのか下りだったのか、体全体で山の地形を感受しながら歩く癖をつけたい。

そして、距離は時間に換算して考えるとよいだろう。平地で1時間に4km(地形図上で16cm)歩くとして、山の中では、その半分の1時間に2km以下となるだろう。30分でよく歩いて1km(地形図上で4cm)だ。標高差で考えるならば、1時間300mを基準としてよいだろう。(もちろん個人個人のその時の体調などによって異なってくるが)

地形図に表れない小ピーク(コブ、ポコン)

二万五千分1の標高は10m毎に引かれている。したがって、10m未満の地形の変化は地形図上では何ら表現されていない。ところが、尾根筋などでピークを通り過ぎたと思ったところで、もう一つ高い本物のピークが表れることがよくある。

手前の10m未満のピークの方が上り下りがきつい場合には、そちらの方が本物のピークとして間違えて印象に残ったりするものである。したがって、この小ピークをきちんと把握しながら進むことは、現在位置の確認にとって非常に大切な作業となる。

一般的に、こうした小ピークのある位置では、尾根上で並行して走る等高線が少し膨らんでいたり、さらには、小さな支尾根が派生していたりするので、注意深く観察すれば地形図に表現されているピークと区別することができる。

山座同定

山座同定は山頂での楽しみの一つである。実際に山頂などで行う操作は、いままで述べた方法と何ら変わるところはない。目標物が特定の山(遠くの山も含めて)に置き換わるだけである。

ところが、実際に山座同定を行うとなると、二万五千分1地形図1枚では同定できる範囲は限られてくる。より広い範囲をカバーするには20万分の1地勢図を持って行くとよいだろう。

そして、広島・山口・島根県境を含む西中国山地全般をカバーするには、20万分1の広島・浜田をあらかじめ張り合わせておくと便利である。さらに、四国、九州(大分県など)を一覧するには、もっと小縮尺のロードマップを使うのも一つの手となる。

当Web内のカシミール展望図は毎日かなりのアクセスがある。今日もどなたかの山行のお供をさせていただいていることだろう。有難いことである。

ところで、カシミール展望図に限らず、まずは手前の山からということになる。その上で、遠くの山が手前の山(同定済で名前が分かっている)の右奥に見えるか、左奥に見えるかを検討する。その時、方位角で何度左右にズレて見えているかが分かれば、”小縮尺”の地図上で検討しやすくなり、カシミール展望図も見やすくなる。

人差し指と中指でつくった"Vサイン"を、腕いっぱい前方に伸ばしたときできる角度(約10度)、同じく人差し指だけの幅(約2度)は、非常に使い勝手のよい角度測定法となる。参考:指幅式夾角測定法、横山雄三2003、p.021

次の目的地に向けて

現在位置さえ確かならば、次の目的地に向けて進むべきルートは、おのずからはっきりしてくる。東西南北(四方位)をさらに細かく分けた八方位程度の感覚で、地形図を見ながら進めばよい 。そういう意味のことが横山著に書いてある。

しかしながら、当Web管理人は徹底した「方向音痴」である。うっかりすると、進むべき方向の逆の方、つまり来た方に引き返している、などといったことが稀ではない。

地図はくるくる回さないと、今見ている景色と地形図上の地形が一致しない。そこで、次の第一歩を踏み出す前に、必ずコンパスの磁針で方角を確かめるようにしている。地図とコンパスがなければ怖くて山に入ることができない。ザックには予備のコンパスとして、反射ミラー式のコンパスも忍ばせている。これまで3度もコンパスを落として、その度に反射ミラー式を使ってしのいだことがある。人に見られるとちょっと気恥ずかしくもあるが、自分の安全のためだ。

とはいうものの、当Web管理人は地図を北に向けて置いただけで、実際に見える地形と見比べながら、現在位置の確定や進むべき方向を決めているのではない。1本の"位置の線"を確実にとらえることに全力をあげている。そのことが、山行における最大の安全保障と考えるから である。

参考資料

広島市周辺部の偏差タンジェント値を、初期のころは下記のように表記していた。できる限り誤差の少ない比率をとった結果である。ただし、そこまで厳密にしてもボールペンの線1本の幅もないレベルの話かもしれない。しかも、図郭の途中に一本余分な線(それも角度によってバラバラの位置)を引く手間がかかる。磁北線の作図には、本文中の370×tan値のアイデアがすばらしい。

tan6度30分 ≒ 40/350(mm)
tan6度40分 ≒ 35/300(mm)
tan6度50分 ≒ 30/250(mm)
tan7度00分 ≒ 37/300(mm)

最後に、tan(タンジェント)値の具体的な求め方を示しておこう。例えば、6度40分(6.67度)の tan(タンジェント)は、= tan(6.67×3.14/180)を求めればよい。

括弧の中の式は、6.67度をラジアン値に変換するもので、3.14は円周率πですね。このπを“3”にしようという“ゆとり教育”が始まるそうですが、この教育方針が成功したとき日本国は確実に滅亡していることでしょう。

2002/12/28訂正追記
新指導要領(2002年4月1日施行)においても、円周率として3.14を用いることに変わりはない。ただし筆算で計算する場合、(掛算では)小数点一桁までしか取り扱わないことになったため、事実上、円周率3(または3.1)となってしまったのである。どうしても円周率3.14としたければ、電卓を用いなければならないという。この程度の計算で電卓に頼っていては、やはり日本国沈没である。
(参考:AKIMASA.NET「団塊の世代一代記」円周率3?)

余談はさておき、タンジェントの値はEXCEL(表計算ソフト)の関数を使って簡単に求めることができる。あるセルに、半角英数字で “=tan(6.67×3.14/180)”と書きこめば、結果が 0.116882 と求まる。

非常に几帳面な性格で、角度45度のタンジェント値は絶対に“1.000”でなければ気が済まないという人は、3.14の代わりに π関数(引数なしでよい)を使って、=tan(6.67×PI()/180)とすればよい。(もちろん全て半角英数字)
ちなみに、結果は 0.116942となる。

ただしこの場合、π関数のみ正確な数値を使用したため、40/60=0.67としている分の誤差がかえって大きくでてしまっている。

大正解は、=tan((6+(40/60))×PI()/180)である(半角で入力)。
ちなみに、結果は 0.116883となる。これは、
40/60=0.67、π=3.14で計算した場合とほとんど同じ値である。

アマゾンレビュー

「登山者のための地図とコンパスの使い方」

横山雄三著、成山堂(2003年)

「地図とコンパスの正しい使い方を考える」
(アマゾンレビュー、akimasa21、2006/5/6)

山行の安全を考えるとき、最大のポイントとなるのは現在位置の確認だ。そのためには、二万五千分1地形図(国土地理院)と回転盤付きオリエンテーリング用コンパス(シルバ社製など)の二つは、ぜひとも持って行きたいツールだ。この二つをどの様に使いこなせば現在位置をより正確に知ることができるのか、これが本書のテーマだ。著者の肩書をみると、海上保安大学校名誉教授とある。海事の専門家らしく、現在位置の確認のために、"位置の線"(現在位置はこの線上のどこかにあるはず)という考え方を取り入れて、コンパスの操作方法および地形図上での作図方法について、懇切丁寧に説明している。

現在の国土地理院地形図は、空中写真測量によって作成される。そこでは、まず最初に空中写真撮影を行い、それをもとに図化機を使って等高線等を描いていく。その等高線に関して、最近ではほぼ完璧に信頼できるレベルに達しているといわれている。それと比べて、登山道はかなり正確さに欠ける場合が多い。森の中は空中写真には写らないため、細い山道まで把握することが困難なためだ。そこで地図とコンパスを持ち、山の地形を全身で感受しながら歩くことによって、登山道の微妙なズレをもしっかり把握できるようになれば、ますます安全で楽しい山行となることだろう。本書を熟読することによって、独学でもその入口に立つことがきっとできる。

「山岳地形と読図」

平塚晶人著、山と渓谷社(2005年)

地図とコンパスの使い方
(アマゾンレビュー書き換え、akimasa21、2006/5/6)

前著「2万5000分の1地図の読み方」小学館1998年刊は、地図の読み方(読図)を中心とした本で、巻末には練習用地形図がたくさん付いていた。本書は新たな書き下ろしであり、様々な山岳地形の写真をふんだんに取り入れている 。実際の地形が、地形図上ではどの様に表現されているのかがよく分かり、山行の参考となる。

地図とコンパスは、安全な山行のために必要不可欠かつ簡便な道具である。この二つをセットで使いこなすことによって、山行は限りなく安全で楽しいものとなるだろう。本書でも前著同様コンパスの使い方は示されている。ただし、現在位置の確認方法として、尾根道や沢沿いの道の方位角を測定する方法のみに終始している。登山道上にない目標物を使った現在位置の確認作業といったテクニックは紹介されていない。本書も題名にある通り”読図”という範疇に入る本だといえる。

地図とコンパスの使い方
(アマゾンレビュー初出、akimasa21、2005/9/17)

以下のような明らかな考え方の誤り等を含めて、上記のように書き換えた。
(2006年05月06日)

「ここでコンパスを使うための条件は、現在位置を常に把握し<続ける>ことにある。」これは絶対におかしい。地図とコンパスを使うことによって、現在位置を確認するのである。