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ひろしま百山(私の踏み跡)>> 細見谷渓畔林と十方山林道 >>「創立20周年記念誌(草稿)」
学術調査報告書「細見谷と十方山林道(2002年版)」完成
- 植物、小型サンショウウオ、そして地質や地下水調査など -
このページの目次です
西中国山地ブナの森づくり
既存の植林地や苗畑の維持・管理を行う
「西中国山地ブナの森づくり」の植林地(現在4か所)で、引き続き、既存の植林地や苗畑の維持・管理を行っています。私たちの最後の本格的な植林(猪山地区)は1998年3月のことであり、その後は人手不足から植林地の拡大までには至っていません。(*植林回数再確認)
今年の主な作業としては、中津谷川上流では、トチ、ミズナラなどを補植(4/14)しました。猪山では、地元の方々との交流を図るとともに下草刈り(8/4)をしました。もみの木森林公園東隣りの植林地でも下草刈り(8/15)をしました。そして、吉和の苗畑では今年最後の手入れの日(12/1)まで、数回の下草刈りなどの作業を行いました。
十方山林道周辺の学術調査始まる
学術調査報告書「細見谷と十方山林道」(2002年版)
昨年の秋、私たちは「大規模林道問題全国ネットワークの集い(第9回)」を広島で開催しました。それは西日本では初めての集会でした。そしてそのことがきっかけで、今年から十方山林道沿いの本格的な学術調査を始めることになりました。
今年一年間の成果は、さっそく「細見谷と十方山林道」(2002年版)としてまとめられ、年末(12/25)に冊子を発行しました。内容は、細見谷川上流部の小型サンショウウオや植物あるいは昆虫などの生物、および十方山林道付近の地質に関する調査について報告したものです。
細見谷では、このような本格的な調査は今まで一度も行われたことがありませんでした。しかも、数少ない断片的な情報はすべて行政側がにぎっていました。したがって、今までの私たちには、十方山林道の大規模林道化反対について、科学的な根拠に基づく論理の展開ができないもどかしさがありました。
しかし、これからは違います。行政側を上回るほどの良質な情報を私たちは手にしています。私たち一般市民が、専門家の指導のもとに、このようなきちんとした学術調査を行うことができたことは、非常に意義深いものがあると考えます。
なお、「細見谷と十方山林道」(2002年版)作成にあたって、富士ゼロックス端数倶楽部から20万円の補助金をいただきました。
渓畔林は生物多様性の宝庫
専門家としてまず最初にお招きしたのは、国際自然保護連合委員の河野昭一・京都大学名誉教授(植物学)です。広島県吉和村で講演会を開催(5/26)して、翌27日には、実際に十方山林道を歩いていただきました。
中国新聞記事(2002年5月28日付)によれば、河野先生から「(十方山林道沿いの)細見谷一帯がイヌブナやサワグルミ、ミズナラが渓谷に密集する「渓畔林」を形成」しているとの説明があり、付近一帯は「渓谷沿いに残る希少な原生林」であると評価されました。
細見谷渓畔林という言葉を知ったのはこの時がはじめてです。そして、「ブナ林としてだけでなく、これほどの規模で第一級の渓畔林が残る例は中国地方にはない。希少な動植物も多く、環境学習の場としても現状維持が必要」との河野先生の指摘(同上新聞記事)に意を強くしたのです。
各種調査始まる
植物関係では、その後、河野先生の教え子である米澤信道さんが京都からお見えになり、本格的な学術調査(8/17~19)を実施しました。
米澤さんは、これ以降継続的に細見谷で調査を行い、私たちもその都度同行しました。そして、細見谷が私たちの想像をはるかに超えた生物多様性の宝庫であることに気付かされていくことになります。
植物調査の前に、小型サンショウウオ観察会&調査(8/10,11)も行いました。これら2件の調査については、中国新聞に解説記事(2002年9月10日付)が載りました。
秋には、桑田健吾ご夫妻(広島県三良坂町在住)による植物観察会&調査(9/29)も行いました。その少し前には、小人数での植物調査(9/16)を行っています。
中根周歩先生の地下水調査も実施(10/29,30)されました。
十方山林道ウォーキング
今年は秋の林道ウォーキング(一般公募)を実施(11/3)しました。初めての試みとして、十方山林道の端(吉和西)から端(二軒小屋)までの約15㎞を歩き通しました。
11月上旬とは思えない寒さで雪化粧している中を、あられに打たれながらひたすら歩きました。広島高教組環境教育推進委員会より16名の参加がありました。次の世代へ向けて、私たちの自然保護の願いが受け継がれることを願っています。
なお今年は、雪中林道ウォークや細見谷のビデオ撮影も行っています。
各種の団体が活動を始める
今年は、十方山林道の大規模林道化をテーマの一つとした会がいくつか立ち上がりました。そして、既存の組織・団体と共にお互いが助け合い、その時々に応じて、各種催し物の主催者となりあるいは協力者となって、活動を進めています。
環・太田川
原哲之・森水の会会員などによって設立され、昨2001年から機関紙を発行しています。「太田川」は、西中国山地(森)と瀬戸内海(海)をむすぶ広島県西部最大の川です。そして、広島市の水道水のほとんどはその太田川から得られているのです。「環・太田川」とは、水の重要性を訴え続けている「森と水と土を考える会」(広島市)にふさわしいテーマの一つとも言えます。
吉和の自然を考える会
広島県吉和村在住(同村出身)の谷田二三さんが代表を務めています。狭い社会で大規模林道反対の声をあげ続けることは大変です。
そうした中で、森水の会と共同で、大規模林道建設中止を求める署名(約1万5千筆)を広島県および吉和村に提出しました。また、大規模林道建設中止の意見書を林野庁と環境省あてに提出しました。
同会は「細見谷と十方山林道」(2002年版)にも関わっています。同書の題字は谷田さんのもので、黒々とした力強い墨は彼の性格を表しているようです。
廿日市・自然を考える会
今年は、「廿日市・自然を考える会(高木恭代・代表)」でも私たちと同様の林道ウォーキングの企画(10/27)を立てており、二つのグループが相次いで十方山林道へ入ることになりました。
さらに、中村敦夫参議院議員と細見谷(渓畔林)を歩く催し(11/23)も同会主催(後援、森水の会など)で行われました。引き続いて、その夜には中村敦夫講演会もありました。
広島フィールドミュージアム
旧・宮島自然史研究会(金井塚務会長)を改称したもので、研究の軸足を宮島(ニホンザル)から西中国山地(ツキノワグマなど)に移しています。本年末の予備調査(10/26)以来ほぼ毎週のように細見谷渓畔林に入り、ツキノワグマを中心とした哺乳類の調査を継続中です。
2002年年表
-2月3日(日)、森と水と土を考える会、総会
(カトリック観音町教会、広島市西区観音町)
-3月3日(日)、デポジット法制定ネットワーク広島、総会
-4月14日(日)、植林(トチ、ミズナラなど)中津谷川上流で補植
-5月18日(土)、瀬戸内海エコナビ2002(瀬戸内海の環境保全を考える 2daysシンポジウム)、第1日目
主催/環瀬戸内海会議瀬戸内法改正プロジェクト、森と水と土を考える会
–豊かな瀬戸内海をあしたへ引き継ぐために
講師/水口憲哉(東京水産大学助教授)&高島美登里(長島の自然を守る会)両氏による上関原発計画トークバトル、主催/環瀬戸内海会議、森と水と土を考える会
–瀬戸内法改正プロジェクト中間報告
報告/藤岡義隆さん「広島沿岸の生態系の変遷」(公害をなくす呉市民の会)、青木敬介さん「瀬戸内法改正試案」(播磨灘を守る会)、服部豊さん「リーフレット作成」(大阪湾会議)
(広島市西区民文化センター、広島市西区横川新町)
-5月19日(日)、瀬戸内海エコナビ2002(瀬戸内海の環境保全を考える 2daysシンポジウム)、第2日目
主催/「環・太田川」
–海が蘇えるために陸(オカ)は何をすべきか)
「環・太田川」創刊一周年記念イベント
(広島YMCA、広島市中区八丁堀)
-5月26日(日)、講演会:あなたが次の世代に残せる西中国山地・吉和の宝は?
–ビデオ・スライド上映、吉和の宝 ― 十方山林道沿いの自然林
–講演/河野昭一さん「なぜ温帯性落葉樹林を守らねばならないのか ―その価値と保全の重要性を探る―」(京都大学名誉教授)
–その他語り合いなど、終了後交流会
主催/吉和の自然を考える会、水と緑を育む会、森と水と土を考える会
(旧・吉和村福祉センター、広島県佐伯郡吉和村(現・廿日市市吉和))
-5月27日(月)、十方山林道植物調査、河野昭一、田中幾太郎の各氏
主催/上記26日と同じ
-7月17日(水)、大規模林道建設中止を求める署名、広島県(森林整備室)に提出(約1万5千人分)、”吉和の自然を考える会”と共同、なお吉和村にはその前に提出済み(約1万3千人分)、中国新聞記事(2002年7月18日付け)
-7月24日(水)、大規模林道建設中止の意見書提出(林野庁と環境省あて)、”吉和の自然を考える会”と共同、中国新聞記事(2002年7月25日付け)
-8月3,4日(土・日)、猪山交流会
–3日:バーベキュー、楽器演奏、など
–4日:猪山共有林(1998年3月植林地)の下草刈り
-8月10,11日(土・日)、小型サンショウウオ観察会&調査
(吉和村細見谷川上流)
-8月17~19日(土~月)、十方山林道植物調査、講師/米澤信道さん(京都、日本生物多様性防衛ネットワーク・事務局長)
中国新聞記事(2002年9月10日付)、上記8月2件分の調査について解説
-9月15日(日)、植林地の下草刈り(もみの木森林公園東隣り)
-9月16日(月・祝)、十方山林道植物調査
-9月29日(日)、十方山林道、秋の植物観察会&調査、講師/桑田健吾・武子ご夫妻(広島県三良坂町在住)
-10月26日(土)、広島フィールドミュージアム(旧・宮島自然史研究会、金井塚務会長)、細見谷渓畔林におけるツキノワグマ生態調査開始
-10月27日(日)、紅葉の十方山林道ウォーキング&渓畔学習会
主催/廿日市・自然を考える会
十方山林道を傘をさして散策、「魅惑の里」にて昼食後、田中幾太郎さんの学習会「西中国山地とそこにすむ生き物たち」(島根県益田市在住)
-10月29,30日(火・水)、十方山林道地下水位測定/中根周歩さん(広島大学大学院教授)、田上公一郎さん(広島大学大学院生)
-11月3日(日)、紅葉の十方山林道を歩こう会
主催/森と水と土を考える会
十方山林道の完全走破(吉和西~下山橋~二軒小屋)
-11月17,18日(土・日)、第10回大規模林道問題全国ネットワークの集い(愛媛)
四国西南山地大規模林道計画を考える
主催/大規模林道問題全国ネットワーク、主管/愛媛環境ネットワーク、共催/環瀬戸内海会議
-11月23日(土)、中村敦夫参議院議員と細見谷(渓畔林)を歩く。その夜、中村敦夫講演会
講師/藤原信さん「大規模林道とは何か」(宇都宮大学名誉教授、
大規模林道問題全国ネットワーク・代表委員、みどりの会議・運営委員)
講演/中村敦夫さん「環境の世紀 ― 紋次郎、大規模林道を斬る」(参議院議員、みどりの会議・代表委員)
主催/廿日市・自然を考える会、後援/吉和の自然を考える会、森と水と土を考える会
(はつかいち文化ホールさくらぴあ、廿日市市下平良)
-12月1日(日)、吉和の苗畑手入れ
-12月15日(日)、忘年会
-12月25日(水)、「細見谷と十方山林道」(2002年版)完成
資料集
-「月刊むすぶ」No.375号、大規模林道問題全国ネットワーク広島大会特集号(ロシナンテ社)
-森と水と土を考える会「ばりばり活動講座(1)十方山林道の大規模林道化の中止を求める署名にご協力ください」
『自然保護』No.469:10-11、自然保護協会(2002.9.1)
(森水会報、2002年10月16日、119号P.4-5に転載)
-中国新聞記事(2002年9月15日付け)
日中韓シンポジウム「アジアのクマ」
主催/NPO法人「日本ツキノワグマ研究所(米田一彦理事長)」
(はつかいち文化ホール、広島県廿日市市下平良)