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細見谷渓畔林と十方山林道

林野庁、環境省に対して申入れを行う

<林野庁、環境省に対して申し入れを行う>

十方山林道(既存未舗装)を大規模林道化(拡幅舗装化)することはほんとうに必要なのだろうか。もし工事が実行された場合、どの様な不都合が生じるのだろうか。

2005年08月04日(木)、「細見谷保全ネットワーク」の4団体は、林野庁と環境省に対して細見谷林道問題についての申し入れを行った。当Webに対して、当日の代表の一人である「廿日市・自然を考える会」の高木恭代代表から下記メール (8月29日付け)を頂く。”このメールは転送・転載自由”とのこと、参考資料としてその全文をここに転載する。

当Web管理人注:
原文では文中に衆議院議員選挙立候補予定者3名の実名あり
転載にあたり当Web管理人の責任においてその表記を省略する

皆さま

廿日市・自然を考える会の高木恭代です。 8月4日、「細見谷保全ネットワーク」の4団体から、林野庁と環境省に対して細見谷林道問題についての申し入れを行ないました。(翌日の中国新聞で報道されました。お気づきでしたでしょうか)。遅くなりましたが以下ご報告します。

申し入れの文書(陳情書など)は、事前に松本大輔衆議院議員が林野庁・環境省に届けて下さったので向こうは承知済み。時間はわずか1時間なので、「申し入れ」より「回答を聞く」、そして「回答を聞いてからこちらからいろいろ言う」、という心づもりで臨みました。

●申し入れのかたち

・とき、2005年8月4日(木)12:00~13:00
・ところ、衆議院第一議員会館

・参加者
金井塚務(広島フィールドミュージアム)
原戸祥次郎、堀啓子(森と水と土を考える会)
高木恭代、網本えり子(廿日市・自然を考える会)
植木京子、大畑美紀(廿日市市議・共産)
加藤彰紀(大規模林道問題全国ネットワーク)
花輪伸一(WWFジャパン)

・国会議員
松本大輔(衆・広島2区・民主)
松野信夫(公共事業チェック議員の会事務局長・衆・民主)
佐藤謙一郎( 〃 前事務局長・衆・民主)
紙智子(参・共産)
金田誠一(衆・民主)
松岡徹(参・民主)

・林野庁、森林整備課課長ほか数名
・環境省、○○課長補佐ほか数名

●農水大臣(林野庁)宛ての申し入れ(陳情書)

1.緑資源機構環境保全調査検討委員会に、現地をよく知る研究者、NGOの参加を求め、より事実に即した議論をすること。その上で、検討項目を再吟味し、現状を把握するための調査をやり直すこと。

2.同委員会の検討結果を、工事中止を含む将来に向けた 渓畔林地域利用のための基礎資料として尊重すること。また、林道完成後の移管先である廿日市市に対しても尊重させること。

3.移管先の廿日市市が負担すべき維持費を明示し、透水性舗装の維持管理が可能か否かの検討させること(同市は砂利舗装の維持管理予算がないことを理由に維持費のかからないアスファルト舗装を求めている)。

4.市民の疑問や要望に誠実に対応するよう、監督官庁として機構を指導すること。

●林野庁の回答(森林整備課課長)

1.H12再評価委員会の「渓畔林部分について十分に環境に配慮して…」を受けて、機構では検討委員会をH16・6月に設置し、…(延々と経過を説明)、私どもとしては適切な検討が進められているのではないかと考えております。  一般からの意見募集・意見聴取も行ない、それらを踏まえて…と承知しておりす。適切に進められるよう、機構にお話していきたいと考えているところでございます。

2.委員会や委員会資料は原則公開…。林道が地元に移管されるに際しては、機構と地元廿日市市とで密接な連絡調整が図られ、移管後も十分環境保全が図られることを私どもとしては期待しているところでございます。

3.事業の実施、管理を含めて地元の協力が不可欠。地元自治体に必要な情報提供を行っていくよう、私どもとしては機構にお話していきたいと思っているところでございます。

4.緑資源機構は独立行政法人なので、大きな視点から一般的な指導は法的に排除されております。しかし、私どもとしては、緑資源機構に対し「地元の理解を得るように努めてほしい」ということはお話させていただこうと思っております。

○高木の感想

「よくぞ」と感心するほど中身がない回答。「国は独立行政法人に口出し出来ない」が唯一言いたかったことか。しかし機構は自前の金で幹線林道を作るのではない。国のお金が使われるのである。税金が使われるのである。そもそも幹線林道の注文主は「国=林野庁」ではないか。その幹線林道建設計画が「貴重な自然を破壊しようとしている」と私たちは言っているのである。肝心なことを全て外して、「如何に回答っぽい形にするか」ということだけで作られた回答を延々と聞かされるのは、覚悟をしていても結構厭になる。

●環境大臣宛ての申し入れ(陳情書)

1.細見谷渓畔林の重要性に鑑み、同地域を西中国山地国定公園、特別保護地域または第1種特別保護地域に格上げするよう、広島県に強く働きかけること。同時に、同渓畔林をラムサール条約登録に向けて適正な措置を講じること。

2.同渓畔林地域は魚食によるツキノワグマの高密度生息が可能な地域であり、その特異的環境を配慮してツキノワグマの保護地域とし、孤立個体群の安定的維持に努めること。

3.緑資源機構環境保全調査検討委員会に、現地をよく知る研究者、NGOの参加を求め、より事実に即した議論をすること。その上で、検討項目を再吟味し、現状を把握するための調査をやり直すこと。

4.同委員会の検討結果を、工事中止を含む将来に向けた渓畔林地域利用のための基礎資料として尊重すること。

5.上記3及び4については、細見谷渓畔林生態系の種多様性保全の重要性に鑑み、関係機関等に助言・勧告をすること。

●環境省の回答(項目ごとに各担当者から)

1.「格上げ」については県知事の申し出が必要。広島県に伝えているので県と話し合ってほしい。

11月の第9回ラムサール条約会議に向けて、重要な湿地500選の中から20箇所を選定した。細見谷渓畔林は森林生態系的には重要だが湿地として評価するのは難しい。

2.ツキノワグマは西中国山地の個体群については狩猟禁止にして法的に保護を図っている。

広島・島根・山口の3県で協議会を設けており、そこで数だけでなく行動や生息状況や生息環境の調査を行うよう意見が出ている。金井塚さんも協議会のメンバー。

3.4.事業者の緑資源機構が判断する事項と認識している。

5.政府の関係各省庁が生物多様性の保全を図っていると認識している。国定公園の管理は県の自治事務。広島県から相談があれば助言は行う。

○高木の感想

若い人がかわるがわる原稿の棒読み。そして見かけと同様に中身も薄い。「緑資源機構が判断する事項と認識しております」「県の自治事務と認識しております」など。

さらにラムサールについては、1月の共産党の申し入れに同席された金井塚さんによるとそのときは積極的だったのに明らかに後退したとのこと。(林野庁への気兼ね?)

●そのあとの話し合い

・(金井塚さん→林野庁)検討委員会の専門性の担保について、「県の環境保全審議委員やレッドデータブック委員を中心にお願いしている」とのことだが、それは担保になっていない。検討委員会は雑な議論に終始しており、さらに議論は個別種についてのみで、渓畔林の保全にとって重要な課題を避けて通っている。

・(金井塚さん→環境省)ラムサールの要件についての認識が違う。ラムサールでは山間湿地や河川の生物多様性の重要性が注目されつつある。また前回は「500選以外からも再検討する」という回答だったが?

・(原戸さん、堀さん)検討委員会で検討されている環境影響調査報告書(素案)には調査もれや誤りがいっぱいある。私たちの調査によると‥‥、(緑資源機構作成の地図に「森と水と土を考える会」の植物調査の結果を記入したものを示しながら説明)。このように 貴重な種や巨木の存在を無視して議論が進められている。

・(植木さん)廿日市市の議員として申し上げる。廿日市市と合併する以前の吉和村議会での「大規模林道促進決議」は、細見谷の自然の貴重さが明らかになる以前のこと。廿日市市は財政への負担の点で敷砂利工法に反対しているが、敷砂利よりメンテナンス費がかかる透水性舗装が検討委員会では検討されている。廿日市市は「検討委員会の結論を待つ」としているが、市財政への負担を考えれば、「地元の協力が得られている」といえる状況ではないのではないか。

・(原戸さん)検討委員会に「工事は出来ない」とする権限はあると考えて良いか。

・(林野庁)緑資源機構が自主的に設けている検討委員会なので、報告を踏まえて第一義的には緑資源機構が判断する。その結果事業の実施となれば、実施に向けて必要な林道実施計画の変更を行い、その上で自然公園の協議とかいろいろな協議が必要になる。事業を実施するとすればそれら全てのクリアーが必要である。検討委員会に事業を中止する権限があるかと言われれば、それは緑資源機構が第一義的に判断することだが、その後で林野庁や広島県も関与する。

○高木の感想

だらだらした中身のない回答に時間を取られたため、再質問・再回答・再々質問を重ねて向こうを論理的に追い詰める時間は残っていなかった。それを見越してか向こうは再回答をしない。唯一再回答らしきものは「検討委員会の権限」についてだったが、中身は工事実施に向けての手順を説明しただけのもの。もっともらしい言葉を連ねて、ハードルが高そうな、あるいは極めて慎重にことが進められていそうなニュアンスを出そうとしていたが。

○ご報告は以上です。以下は高木の全体的な感想です。

・ 金井塚さんのツキノワグマをはじめとする哺乳類調査、森水の植物調査、そして反対運動全体は、確実に林野庁・緑資源機構を追い込んでいる。ただし、「工事中止」に追い込んでいるのではなく、「たった今着工出来ないという状況」に追い込んでいる。

・ 私たちが手を抜かない限り、「着工」とはなりにくいのでは? しかし、手を抜いたら向こうはそのときを待っている。(しんどいけれど10年20年でも頑張る覚悟が必要かも)。

・「工事中止」には政治の力が必要になるのだろう。

・おりしも総選挙。「工事中止」以前に今の運動を維持するにも、心有る議員の皆さまのご協力は不可欠。近いところでは次の方々、こころから応援します。ご当選を期待します。皆さまも応援をよろしく。

*林野庁と環境省には、陳情書に加えて詳細な「補足説明」も提出しました。 ご覧になりたい方は高木までメールでお知らせください。折り返し添付ファイルでお送りします。

*今朝の朝日新聞の天声人語にこんなことが出ていました。

「インターネットによる選挙運動は公示と同時に禁止される」。

このメールは転送・転載自由ですが、念のためホームページに掲載される場合は、本日中(8月29日夜12時まで)にお願いします。明日(8月30日)以降の場合は、選挙についての部分の削除、あるいは変更をお願いします。

高木 恭代
(住所電話番号省略)

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