2003年12月06日

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クスノキ手入れ、世界遺産と厳島神社
(出発帰着:宮島桟橋)

2003年12月06日(土)、単独

厳島神社・大鳥居

〈写真〉:厳島神社の大鳥居と連絡船

ユネスコ世界文化遺産「厳島神社」登録7周年記念日

このページの目次です

はじめに

宮島「悠久の森」クスノキ手入れ作業
厳島学講座(第5回)世界遺産と厳島神社

宮島「悠久の森」クスノキ手入れ、大鳥居の巨木に育て、作業ボランティア募る(中国新聞2003年12月01日付け)という記事をみて葉書で申し込みをする。

午前9時に宮島桟橋東側に集合、受付を済ませてマイクロバスで包ヶ浦キャンプ場に移動する。そこで、本日のまとめ役である濱岡寛次・宮島ユネスコ協会事務局長と広島森林管理署の方々から、作業の意義、手順および注意事項を聞く。

作業終了後、引き続いて午後から、講演会・厳島学講座(第5回)「世界遺産と厳島神社」を聴く。

「悠久の森」とは

「悠久の森」とは、厳島神社大鳥居の建て替え用材としてクスノキを永続的に供給することができるように、宮島千年委員会(宮島町民有志)と広島森林管理署が連帯して、今年4月12日に国有林0.8ヘクタール(包ヶ浦キャンプ場近く)を指定したものである。

「悠久の森」には4月12日にクスノキの苗木(1年~5年もの)約170本が植樹されている。今回の作業目的は、その苗木の定着状態を確認し、もし枯れたりしている苗木があれば新しく植え替える等の作業をすることである。

苗木は林道に沿った山林内で、比較的平らな場所に適当な間隔をおいて植えられており、シカの食害を防ぐため、それぞれ防護柵(鉄製の金網)で囲ってある。苗の生育に問題がある場合には、本日の作業のため、あらかじめ目印として防護柵に白テープが付けてある。

当日の参加人数30~40人、5人づつくらいの班に分かれて作業を開始する。山林内に入り、まず白テープのついている防護柵を見つけ出す。次に、防護柵の一部をはずす。適当な深さの穴を掘って苗を植える。防護柵を閉じる、という作業を繰り返す。なお、防護柵は、鉄筋コンクリート建築用の鉄骨らしい。一辺約90~100cm、高さ約180cm位の四角形の金網である。

11時30分までの約2時間で、結局全部で60~70本を植え替えたのではないだろうか。全体の3~4割を植え替えたものと思われるが、これでも順調に生育しているとのことである。先はまだまだ長い。

朱の大鳥居(厳島神社)

厳島神社の海中にそびえ立つ朱の大鳥居は、国の重要文化財に指定されている。その高さは約16m、用材として樹齢400年前後のクスノキの自然木を使い、数十年から百年前後の間隔で建て替えられてきた。

現在のものは八代目で、1875年(明治8年)に建て替えられてから100年以上が経っており老朽化が目立ってきている。しかし、近年建て替えに適するクスノキの巨木は、宮島町、広島県あるいは中四国・九州でも得られないことがはっきりとしてきた。

結局は自分たちでやるしかない。宮島千年委員会は1991年、台風19号で壊滅的被害を受けた厳島神社を守ろうと宮島町民有志で発足した会であり、その翌年からクスノキの育苗に取り組んでいる。宮島で採取したクスノキの種子から苗木を育成して植林していく。そして、これら植林や維持管理のための一連の作業にはボランティア団体の協力を得ようというのである。

午後2時から(3時30分まで)、講演会が宮島町役場で開かれることになっている。内容は今日のボランティア活動とも関連することだ。雨模様のため昼食は講演会の会場である役場に移動してとることになる。

厳島学講座「世界遺産と厳島神社 」

厳島学講座(第5回)「世界遺産と厳島神社 」
- 今、世界遺産委員会で話されていること -
講師:本中眞(もとなか・まこと)文化庁記念物課主任文化財調査官

当日12月6日は、宮島の「厳島神社」が、ユネスコ世界文化遺産に登録された記念の日である。そこでこの講演会は、”世界遺産登録7周年記念講演会”として開催されている。また、厳島学講座は、平成15年度文化ボランティア推進モデル事業として、年間5回の講演会を行い、今回が今年最後ということであった。

講師の本中眞さんは、宮島・厳島神社の世界遺産登録に際して、登録前から関わってきた方で、世界遺産委員会の日本側代表として現在も活躍中である。

講演内容は、世界遺産条約の成立、種別(文化遺産と自然遺産、あるいは複合遺産)と登録条件等と続き、締めくくりは”世界遺産厳島神社の現在と今後”であった。講演は事前配布のコピー原稿を基に行われ、一通りの話が終わった後でスライドを何枚か流して講演内容をおさらいする形で終わった。

真実性(オーセンティシティ)とは何、石の文化と木の文化の違い

講演中ほどで、世界遺産委員会の動きとして、いかに「ほんもの」であるか-文化遺産の真実性(オーセンティシティ)-に対する考え方の変遷についてについて述べた部分は大変に興味深かった。

石の文化(ヨーロッパ等)と木の文化(日本など)では、価値の伝え方に大きな違いが見られる。石の文化では材料そのものの本物性(残存度)を強く求める。したがって、石製建造物が壊れた廃墟もまた文化遺産となりうる。これに対して、木製建造物は腐りやすく元の材料がいつまでも残っている可能性は少ない。建築当初のデザイン・機能を継承しようとすれば、新しい材料で定期的に補修していく以外にない。

真実性(オーセンティシティ)とは何を基準に考えるべきか、洋の東西で考え方に大きな隔たりがある。1994年、ユネスコ後援によるオーセンティシティに関する奈良会議が開催され、奈良文書が採択された。そこでは、「木の文化」における価値の伝え方に理解が示されている。

厳島神社大鳥居の建て替えは、「木の文化」の継承の典型的な事例ということができるだろう。今日そこにボランティアとしてささやかな関わりを持ったわけである。時々雨が落ちてくる天気だったが、実際の作業時間中だけは雨が降ることはなかった。帰りの連絡船からは、経小屋山、船倉山、野貝原山、絵下山がうっすらと見えるのみで、電車からは宮島すら見えなかった。

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なお、初版刊行後も加筆修正を繰り返しています。