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細見谷渓畔林と十方山林道

「細見谷と十方山林道」発行記念シンポジウム(2003/02/02)

2003年02月02日(日)、EIKO
「細見谷と十方山林道」発行記念シンポジウム
水源の森・細見谷を次の世代へ!
-自然とは祖先から譲り受けたものではなく、子孫からの預かりものである-
(広島市まちづくり市民交流プラザ、6階マルチメディアスタジオ、13時~17時)

この度発行された「細見谷と十方山林道」の目次(三部構成)を見ると、”第一部 2002年細見谷学術調査報告書”となっている。広島県十方山・細見谷(渓畔林-水辺林)の小型サンショウウオや植物あるいは昆虫などの生物および地質に関する調査について報告したものである。

細見谷ではこのような学術調査は今まで一度も行われたことがないという。この調査は、いわゆる専門家による学術調査ではないものの、今後の議論を深めるための唯一貴重な基礎データとなることだろう。 (後日注:専門家も参加している)

私たちもこの調査の一部に参加した。昨年8月のことである。調査を手伝ったという程のこともないのだが、この報告書には二人して参加者名簿に名を連ねている。さらに出来あがった報告書を当日の会場でいただけるというので発行記念シンポジウムに参加することにしたのである。

さて、本の目次は”第二部 細見谷の未来へ”、”第三部 細見谷は世界の宝”と続く。”巻頭言 細見谷の自然-特異な渓畔林植生とその価値”を含めて、日本を代表する学者や十方山林道の大規模林道化に反対する各会代表および関係者の手に成るものである。

その内容は、大規模林道化の問題点指摘と代替案の提示(第二部)、および細見谷をいかに次世代に引き継ぐか(第三部)、である。当日はこれら執筆者の多くがその都度壇上に上がり、基調講演、報告、ディスカッションを経て、まとめとして”メッセージ”を出席者全員で採択して閉会した。

シンポジウムの冒頭、基調講演は「生命(いのち)の森-西中国山地」(田中幾太郎さん)である。田中さんは、益田市(島根県)在住の元理科教師とのこと。西中国山地で生まれ育った方で、高度経済成長がいかに日本の豊かな自然を破壊してきたかについて数多くの実体験を持っている。

その主張を私なりにまとめれば、各人が金(マネー)万能の価値観を捨て去り、ほんとうの豊かさとは何か改めて考え直すべき時にきている。そうして考えたことを自立した個人として行政に物申す態度が必要ということになろう。中根周歩教授(広島大学大学院)は、学者として調査研究をする覚悟を示した。一般市民に正確な判断材料が数多く与えられることを期待したい。

金井塚務さん(宮島自然史研究会会長)は、渓畔林周辺をwetland(湿地帯)と捉える考え方を提案している。湿地帯ということになれば、ラムサール条約(ウェットランド-湿地を保全するための国際条約)登録地としてその候補と成り得る訳である。日本における今までの条約指定登録地は、湿原(湖、干潟など)に限られており鳥類が主役のように思われているが、条約の根本概念からするとそうばかりはいえないようだ。

「吉和・細見谷をラムサール条約登録地に!」 という学習会も始まるという。今後の展開が楽しみである。

<「細見谷と十方山林道」 発行記念シンポジウム>

「細見谷と十方山林道」(2002年12月発行)は、細見谷(西中国山地・広島県)に関する学術調査報告書である。この細見谷では現在開発か保護か、すなわち細見谷沿いにある既存の十方山林道(未舗装)の「拡幅舗装化工事」をめぐって賛否両論が戦わされている。

<プログラム>

「細見谷と十方山林道」発行記念シンポジウム
 水源の森・細見谷を次の世代へ!
- 自然とは祖先から譲り受けたものではなく、子孫からの預かりものである -

みなさんは細見谷をご存知ですか?細見谷は山陰・山陽の水源の森・西中国山地国定公園にあります。私たちは少しでもその自然を学ぼうと2002年に学術調査を行いました。そして、私たちのごく身近に、日本の、世界の宝となる稀有な渓畔林(水辺の自然林)が残されていることを知りました。細見谷の自然を傷つけることなく次の世代に引き渡す方法をご一緒に考えませんか。

★2003年2月2日(日) 午後1時~5時
広島市まちづくり市民交流プラザ
(6Fマルチメディアスタジオ)
広島市中区袋町6番36号
TEL:082-545-3911

プログラム
★基調講演:生命の森―西中国山地
田中幾太郎さん
(日本動物学会、島根県野生生物研究会会員。著書に「いのちの森 西中国山地」〈光陽出版社〉など。)

★報告:
①西日本を代表する渓畔林・細見谷 森と水と土を考える会
②地質から見た細見谷の特徴 古川耕三さん(日本地質学会会員)
③自然を本当に活かした地域振興を 中根周歩さん
(広島大学大学院生物圏科学研究科環境循環予測論講座教授・森林生態学)
④野外博物館としての十方山林道の可能性 金井塚務さん(宮島自然史研究会会長)

★ディスカッション:細見谷を次の世代へ!
パネリスト(敬称略・50音順):
金井塚務・田中幾太郎・・中根周歩
(進行:森と水と土を考える会)
なお、谷田二三さん(吉和の自然を考える会代表)体調不良にて欠席

★まとめ・メッセージ採択

主催:森と水と土を考える会
後援:吉和の自然を考える会

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