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細見谷渓畔林と十方山林道

1990年(平成2)の活動記録

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ひろしま百山(私の踏み跡)>> 細見谷渓畔林と十方山林道 >>「創立20周年記念誌(草稿)

「森と水と土を考える会」設立
- 十方林道問題やゴルフ場問題を考える -

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森水の会20周年誌(草稿)について

「森と水と土を考える会」設立

十方林道問題やゴルフ場問題を考える

「森と水と土を考える会(略称:森水の会)」は、1990年5月27日に「森と水と土を考える広島の会」(会員数約70名)として設立されました。

会の名前となっている「森と水と土」とは、豊かな森でつくられた水が、川となって流れ下りながら豊かな大地をはぐくみ、そして最後は豊かな海になる、といったイメージでしょうか。

私たちの初期のころのテーマは、十方山林道の大規模林道化問題や、広島県内のゴルフ場建設問題などでした。

広島市民の飲み水として欠かすことのできない太田川の流れに沿って考えたとき、源流域(十方山林道)、中・下流域(ゴルフ場)そして最下流域(瀬戸内海)と、会設立当初から主なターゲットは出そろっています。

なお、同年中に”広島の会”の部分は削除され、「森と水と土を考える会」として現在に至っています。

細見谷林道問題(大規模林道問題)

十方山林道の大規模林道化とその影響について

十方山林道(細見谷林道)の大規模林道化(計画延長13.2km)とは、既設の十方山林道(幅員3~4m、未舗装、長さ約14.4km)を、大規模林業圏開発林道(いわゆる大規模林道)事業に組み込んで、拡幅舗装化(幅員の基本規格7m、全面舗装)する事業計画のことをいいます。

ここで、既設の十方山林道とは、広島・島根県境尾根(恐羅漢山~五里山)の広島県側の谷(細見谷)を走る林道のことです。1953年(昭和28)完成、1959年(昭和34)に再整備されたもので、未舗装ながら4トントラックが走行可能な林道となっています。

この林道沿い(細見谷)で、かつて大規模な拡大造林が行なわれ、標高差300~400mの両斜面のほとんどすべてが伐採されました。そしてその結果、広葉樹の森(ブナ・サワグルミ・トチ・ミズナラなど)は、スギ・ヒノキといった針葉樹で置き換えられました。

そうした中で、十方山林道の中間部分、細見谷川(太田川の源流の一つ)沿いの長さ約5kmほどの区間では、かろうじて手付かずの自然(水辺林)が残されています。

この渓流沿いの水辺林のことを、細見谷渓畔林といいます。渓畔林としての規模は西日本随一であり、生物多様性の宝庫であることが、21世紀に入ってから行われた学術調査によって分かってきています。

しかしながら、残された細見谷渓畔林は、幅わずか100~200m(長さ約5km)くらいしかありません。細見谷林道(十方山林道)が拡幅舗装化されることによって、細見谷沿いの原生的自然が完全に失われてしまう恐れがあります。

森水の会では、会発足当初から現在に至るまで、「細見谷林道問題」には、二十年間にわたって関わり続けています。初年度の今年はさっそく、十方林道を歩くかい(6/24)、十方林道シンポジウム(10/6~7)を開催しました。

ゴルフ場建設問題

バブル期の総合保養地域整備法(いわゆるリゾート法)制定

総合保養地域整備法(昭和62年法律第71号)、つまり、いわゆるリゾート法が制定されたのは、まさにバブル絶頂期の1987年のことでした。そしてそのわずか数年後には、バブルははじけ飛んでしまいました。

日本の主要な経済指標の一つである日経平均株価は、1989年12月29日の大納会に過去最高値(終値、38,915.87円)を付けた後、翌1990年(森水の会設立の年)10月1日には、一時(ザラ場で)2万円割れを示しました。わずか9か月で最高値の半値近くまで下落したことになります。

そしてその後も、日経平均株価の下落傾向に歯止めはかかっていません。いまだにバブル崩壊後の最安値は更新され続けており、2009年3月10日には、最高値のわずか18%にあたる7,054.98円(終値)を記録しています。

リゾート法制定とゴルフ場経営、そして立ち木トラスト

リゾート法制定後、数多くの企業がゴルフ場経営に参入してきました。各種の優遇措置を踏まえてのことだったのでしょう。しかし、その資金計画には会員権売買の手数料を当て込んだだけのものなど、かなりずさんな案件が数多くありました。

森水の会としては、そうした風潮の中で、広大な土地を占有するゴルフ場による環境破壊が行われることを懸念しました。そして、各地のゴルフ場建設反対運動に協力するようになりました。そこで用いたのが「立ち木トラスト」という手段です。

「立ち木トラスト」とは、「開発予定地の地権者からその土地に生育する樹木のみを買い取り、個々の樹木に名札を取り付けるなどして「立ち木権」を主張し、開発を阻止する運動」(EICネット環境用語集)のことです。

法律的には、土地と切り離して、立ち木にも独立した物権(立ち木権)が成立するとされています。たとえ土地の所有権が移転されたとしても、「立木(りゅうぼく)」の権利はそれとは別に残すことができるのです。それによって、土地の開発を阻止しようというわけです。

広島県ゴルフ場問題連絡会および環瀬戸内海会議について

森水の会設立当時、ゴルフ場建設反対をテーマとして活動する団体が、広島県内はもちろんのこと全国各地にありました。そのうちの広島県内の諸団体が集まって「広島県ゴルフ場問題連絡会」(会長・原戸祥次郎)を結成しました。

さらに、瀬戸内各県の諸団体が連帯して「環瀬戸内海会議」という組織を作りました。主なメンバーは、「森と水と土を考える広島の会」、「関西水系連絡会」、「ゴルフ場とリゾート法を考える愛媛県民の会」そのほかです。

森水の会は、「環瀬戸内海会議」立ち上げ団体の一つとして、同会議設立直後から事務局(及び事務局長)を引き受けていました(1998年まで)。そして、森水の会単独で、あるいは環瀬戸内海会議の一員として、広島県内をはじめ各地のゴルフ場建設問題に関わってきました。

そのほか

ところで、大規模林道の事業主体は、最初、農林省所管の特殊法人「森林開発公団」(1956年設立)でした。同公団はその後、緑資源公団と名称変更(1999年)、さらに独立行政法人「緑資源機構」(2003年)となり、2008年3月末で廃止されました。

事業そのものは各道県に移管され、事業継続の可否を各道県の判断にゆだねることになりました。それから4年後の2012年1月19日、ついに広島県は、県議会で「細見谷の大規模林道建設工事を国から継承しない」ことを表明しました。

シンポジウムは新聞掲載されました。(新聞名不明)
「来月6日から広島・戸河内で、ブナ林の保護を考え林道シンポ」

シンポジウムにおける田中幾太郎さんの熱弁が心に残りました。

私たちがゴルフ場問題で成果を上げることができた背景には、その後のバブル崩壊による企業の資金繰り悪化があったことは確かでしょう。しかし、一番大きな成功要因としてあげられるのは、地元関係者が自分自身はもちろんのこと、時には家族を犠牲にしてまでがんばったことです。

それでもなお、跡地の有効利用をどうするかなど、問題はまだ残っています。そして、さらなる模索が今も続いています。

できるだけコンパクトに過不足なくまとめるつもりではあるが、
一部資料が欠落しており、既にまとめの内容に濃淡がでている。

下記項目は欠号にて詳細不明
10月、反原発の祭り「土・水・空気を生かしん祭」
講演、丸木位里・俊ご夫妻

不明/広島県ゴルフ場問題連絡会設立
不明/原さんが「百姓や」創業

毎日新聞・余禄(2000年1月15日付け)
丸木俊さん

1990年年表

5月27日(日)、森と水と土を考える広島の会、設立総会
(広島市社会福祉センター、広島市中区千田町)
5月31日(木)、広島市役所に対して様々な申し入れ(8項目)
広島市内で営業中および建設計画中のゴルフ場について
江波山公園の開発工事(樹木伐採)について、など
6月5日(火)、江波山の実態調査、主催/江波山を愛する会
6月16日(土)、瀬戸内海を守ろう!「環瀬戸内海会議」
講演/山田国広(関西水系連絡会)、「ゴルフ場亡国論」の著者
歌と講演/南修治(シンガーソング・ファーマー(百姓)、立ち木トラスト提唱者)
提案/「環瀬戸内海会議」設立提案、交流会
主催/森と水と土を考える広島の会、関西水系連絡会、ゴルフ場とリゾート法を考える愛媛県民の会、ほか
(広島市社会福祉センター、広島市中区千田町)
6月24日(日)、十方林道歩こう会
コース/祠(山の神)~下山橋~水越峠~二軒小屋(約10㎞)
7月15日(日)、もうこれ以上「ゴルフ場はいらない!」
広島県知事・広島市長あて署名開始(紙屋町、可部の2か所)
7月21~22日(土・日)、瀬戸内シンポジウム
(広島国際会議場、広島市中区中島町)
8月4~5日(土・日)、瀬戸内海トラスト、主催/環瀬戸内海会議
8月4日、講演会&コンサート
(因島市民会館、現・広島県尾道市因島土生町)
講演会/本間都さん(関西水系連絡会)「飲み水の汚染問題について」
講演会&コンサート/山里節子さん(新石垣空港建設阻止委員会)「リゾート開発とその背景にある国の権限移譲問題について」、南修治さん「ゴルフ場の問題点と岐阜県での立ち木トラストの有効性について」
因島から生口島(広島県)に移動、産廃処理場跡見学
最後に、弓削島(愛媛県)にて山里さん南さん二度目のコンサート
8月5日、弓削島にて立ち木トラスト
9月30日(日)、森と水と土を考える会、初の総会
(広島市西区民文化センター、広島市西区横川新町)
10月6~7日(土・日)、十方林道シンポジウム
(恐羅漢民宿「上前屋」、現・広島県山県郡安芸太田町横川)
講師/田中幾太郎さん他
主催/十方林道シンポジウム世話人会(森水の会主体)
10月、反原発の祭り「土・水・空気を生かしん祭」
講演/丸木位里・俊ご夫妻
11月下旬~12月上旬、ゴルフ場問題について広島市議団との意見交換会(各政党別に5か所)

会設立から最初の植林までの準備期間(1990年~1995年)
3年連続で植林を行う、10周年を迎える(1996年~2000年)
大規模林道問題全国集会(広島)に引き続いて、
学術調査記録および資料集「細見谷と十方山林道」作成(2001年~2006年)
緑資源機構廃止、そしてその後(2007年~2010年)

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