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細見谷渓畔林と十方山林道

大規模林道問題全国ネットワークの集い

1973年(昭和48)、森林開発公団(後の「緑資源」機構)は、林業の振興等を目的として全国に7つの林業圏域を設定しました。大規模林道(後の緑資源幹線林道)は、これらの林業圏域において、林道網の中核として位置付けられた林道のことです。大規模林道は、スーパー林道と同様に厳しい山岳地帯を通る道路であり、林道工事中や完成後に擁壁・路肩等の崩落が各地で起きています。

注:本稿は、山本明正著『細見谷渓畔林と十方山林道』自費出版(2007年)を電子書籍化する準備のために加筆修正しているものです。したがって、その背景は2007年当時のままとなっています。

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大規模林道問題全国ネットワークの歩み

全国各地の大規模林道問題を考える地元諸団体が、全国的なネットワークを形成して活動を開始しました。それが大規模林道問題全国ネットワークです。

第1回大規模林道問題全国ネットワークの集いは、1993年6月26日~27日(平成5)に山形県長井市と白鷹町を会場にして開かれました。そして、1995年6月24日~25日(平成7)には、東京で全国大会(第3回)を開いています。

東京大会では、加藤彰紀・大規模林道問題全国ネットワーク事務局長を中心に準備が進められ、代表世話人には、大石武一・元環境庁長官などが名を連ねています。そして、1999年9月(平成11)には、大規模林道問題全国ネットワーク編『大規模林道はいらない』(緑風出版)を刊行しています。

2001年10月6日~7日(平成13)には、広島で第9回大会が開かれました。この時初めて、「森と水と土を考える会」が1990年5月(平成2)の結成以来訴え続けていた細見谷は、全国的なネットワークとつながりを持つようになったのです。

そして、広島大会の翌年から、植物に関しては、河野昭一・京大名誉教授を中心とした本格的調査が開始されました。金井塚務・広島フィールドミュージアム(当時、宮島自然史研究会)会長のツキノワグマをはじめとする哺乳類の調査も追って開始されています。

広島での2回目の大会(第14回大会)は、2006年6月10日~11日(平成18)に開かれ、全国から多くの方が参加しました。そして、細見谷現地観察会(10日)に続く夜の交流会では、私は何人かの方と名刺交換をして、その場で本書出版の意思を宣言しました。

翌日(11日)の集会では、『大規模林道はいらない』の共著者のほとんどの方やその他の方が登壇してお話をされました。また、藤原信・宇都宮大学名誉教授(1931年生)は、これを機に大規模林道問題全国ネットワーク代表委員を勇退することになりました。

葉山の自然を守る会(山形県)の場合

葉山の自然を守る会(原敬一代表)は、1986年3月(昭和61)の守る会結成以来12年にして、大規模林道・朝日~小国区間(真室川~小国線)の工事中止を勝ち取りました。そして、核心部分の白鷹工区(葉山)は廃止と決定しました。なお、第1回大規模林道問題全国ネットワークの集いは、山形県長井市と白鷹町で開かれました(1993年6月)。

同地の大規模林道建設予定地は、花崗岩が深層まで風化している地帯であり、真砂状の脆弱な地層は崩落しやすいとされています。1995年7月(平成7)には、大雨が原因で工事中の道路が約30mにわたって剥ぎ取られ、谷底に流出してしまいました。(下記写真:葉山の自然を守る会提供、略)

さらに、残工事を終了後廃止された区間で、集中豪雨による崩壊(2004年7月)があり、修復工事を行っています。建設中止によって全く利用価値のなくなった大規模林道が、自然破壊を誘発することによって、工事終了後も血税を必要とする状況が続いているのです。

なお、当地では2003年4月1日(平成15)に保護林の一つである森林生態系保護地域(朝日山地森林生態系保護地域69,954ha)が設定されました。フレデリック・ユーテック主任研究員(カーネギー自然史博物館)は、葉山ブナ林調査(河野昭一京大名誉教授)1996年にも参加しています。そして、「日本のブナ、特に山形、秋田の森は多様性があり、風格が全然違う」と述べています。葉山ブナ林は、クマタカ、イヌワシの舞う豊かな森でもあります。

1996年12月20日
大規模林道、朝日~小国区間を含む3区間で工事休止、林野庁公表

1997年11月28日
高橋和雄山形県知事が、高橋勲林野庁長官に要望書提出。

その内容は、白鷹工区は断念する(未開設部分の開発中止)。ただし、その代わりに、既設の黒鴨林道を代替ルートとして、あくまでも大規模林道を実現するために休止解除を求めたものでした。

1998年12月18日
大規模林道、朝日~小国区間、正式に中止となる(林野庁)

注:このページは、電子書籍『細見谷渓畔林と十方山林道』アマゾンKindle版(2017年3月6日)の一部です。

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