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マツ枯れ対策としての農薬空中散布
日本全国の多くの自治体では、毎年5月~6月ころになると、スミチオンなどの農薬を空中から散布する作業(空散)が繰り返し行われている。
「松くい虫特別防除法」(1973年制定)に基づいて始まった事業で、マツ枯病(松くい虫被害)の被害対策を目的としたものである。
その後、この法律は「松くい虫被害対策特別措置法」(1977年制定)となり、さらには同法を吸収した「森林病害虫等防除法」(1997年制定)として事業実施の根拠となっている。
マツ枯病(松くい虫被害)の原因は何?
マツ枯病の原因はマツノザイセンチュウという線虫にあるとする説が1971年に日本で発表され、1973年には「松くい虫特別防除法」が制定された。
この法律に基づき、全国各地で農薬の空中散布(空散)が始まった。しかしながら、空散開始から30年以上の年月を経て、マツ枯れの被害はむしろ広がっているといえるのではなかろうか。
マツ枯れザイセンチュウ説
マツ枯れザイセンチュウ説によれば、マツノザイセンチュウ(材線虫)がマツの幹にある仮導管(針葉樹は導管をもたない)で繁殖し、マツの水分を吸い上げる機能が妨げられる結果、マツ枯れに至るのだという。
なお、材線虫は体長1mm未満であり、その伝播(移動)には、媒介者としてマツノマダラカミキリ(カミキリ虫の一種)が欠かせない。
材線虫は、元々日本には生息せず、北アメリカから入ってきたものである。そのため、日本列島周辺に自生するマツ属は抵抗力が弱いとされている。最近では、被害は韓国そして中国本土や台湾にも広がり、EU(ヨーロッパ連合)でも問題にされはじめたようである。
マツ枯れ大気汚染説、そのほか
マツ枯病の原因は、ほんとうにマツノザイセンチュウ(そしてそれを媒介するマツノマダラカミキリ)なのだろうか。大気汚染による酸性雨の影響などそのほかの原因は考えられないのだろうか。原因を取り違えていることはないのだろうか。学会での真摯な討論が積み重ねられることを切に願うものである。
スミチオンは安全か
スミチオンなどの農薬は、人体にとって安全といえるのだろうか。すぐに分解されてしまうので大丈夫だとほんとうにいえるのだろうか。
農薬散布で生態系をみだすことはないのか?
空中散布した農薬は、媒介者としてのマツノマダラカミキリ以外の生物は殺さないというのだろうか。そんなことは考えられない。スミチオン散布によって、目的以外の「種」の生存が脅かされることは否定できない。
空中散布された農薬が拡散することはないのか?
空中散布された農薬は、航空防除区域内だけに留まり、その外側へ飛散することはないのだろうか。あるいは、地下水などをとおして周囲へ拡散する恐れはないのだろうか。
信濃毎日新聞(2009年1月28日付け)によると、長野県厚生連佐久総合病院(佐久市)は、「上田市が松くい虫対策で農薬を空中散布している場所に近いほど、頭痛やのどの痛みを訴える人の割合が高い傾向にある」として、上田市に農薬空中散布の中止を申入れている(1月27日)。
上田市の母親グループに依頼したアンケート調査に基づくもので、同母親グループも連名で申入れを行っている。その後上田市では、農薬空中散布を中止したという。(新聞各紙2009/05/14付け)
科学的な検証及びデータの公開が望まれる
そのほか、空散に代えてマツの樹幹へ薬剤を直接注入する方法や、マツ枯れたマツの処理方法など、検討すべき課題は多岐にわたっている。
マツ枯病の原因とその対策について、総合的な検討がなされ、それらデータが一般市民にも公開されることが望まれる。今こそ、専門家、行政そして市民が三位一体となった取り組みが求められている。