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新設区間の終点部分から吉和西地内の区間終点に至る部分(3.7km)
・既設林道を利用して幅員4.0m(車道幅員3.0m)
十方山林道は、2号橋から南西に向かいます。つまり、2号橋(標高820m台)から1号橋(標高約860m)を通り過ぎ、さらに押ヶ峠(標高890m台)を越えてゆきます。そして、押ヶ峠からは国道488号(主川沿い)へ向って緩やかに下ります。その国道488号との接点が、十方山林道最終地点の吉和西(標高約840m)です。
脆弱な地盤を削って拡幅することは可能か
2号橋から西側は、勾配はゆるやかでゆったりと歩くことができます。
しかしこの付近では、林道に沿って多数の地滑り地形と初期的変形地形が発達しています。地域全体が著しい「ゆるみ」状態に達しており、全般的に脆弱化しているのです。(初期的変形地形:空中写真の判読によって確認されるような地滑り性の弱い変状)
このような場所を拡幅するために、2mも山側を削り取れば崩落は必死ではないでしょうか。それとも、そのような崩落を防ぐための、強固な擁壁の建設は可能なのでしょうか。ここでも、費用対効果について厳しい判断が求められています。
いくつかの観察ポイント
ここでも、現地観察会(2003年6月29日)の観察地点ごとに、私なりに地質についてまとめた内容を紹介してみましょう。(参考資料:『細見谷と十方山林道(2006年版)』古川・宮本pp.65-73)
STOP1
最初の観察地点(STOP1)は、1号橋と2号橋の間(2号橋寄り)にあります。
吉和側から延びる林道が2号橋(標高820m台)で突き当たり、そこから曲がりくねりながら下降して、再び接近してくる地点(3号橋)の真上の部分です(標高約850m)。参考までに、1号橋(標高約860m)は、押ヶ峠と2号橋の中間点ヘアピンカーブの地点にあります。
さて、最初の観察地点(STOP1)では、両側がすでにずり落ちて、真ん中にまだずり落ちずに残っている急斜面があります。
その急斜面をよじ登り、崩落開始地点(標高差約40mくらい)に立つと、足元の地盤はやや平坦でふわふわしており、すでに少しずり落ちて上の地盤との間に段差がついているのが分かります。いずれはここも崩れ落ちる運命にあるのだということです。何とも不気味な感じのする場所です。
STOP2
次の観察地点(STOP2)は、最初の観察地点(STOP1)から吉和側に少し歩いて戻り、西向きに林道が湾曲している地点(標高840m台)です。流紋岩がこすれて粘土の層になっています(地滑り下底粘土)。粘土は水を通さないので、その上から大量の湧き水があふれています。そのため林道に水たまりができています。
STOP3
最初の観察地点(STOP1)まで引き返し、さらにまっすぐ歩いて下ります。突き当たりに2号橋(標高820m台)があり、その手前が観察地点(STOP3)です。
地滑り後の崩落崖や、林道脇の「擁壁」にヒビが入っているのを観察します。この林道が建設(昭和28年、1953年)されてから既に約50年たっています。しかし、このヒビ割れの原因はただ単なる老朽化だけではなさそうです。山側の地盤が林道側へ押し出されているのがその原因だということです。
押ヶ峠~国道488号線
十方山林道の吉和側にある押ヶ峠(標高890m台)には、恐羅漢細見峡「自然休養林」という木製の標識や、水源かん養保安林の範囲図、そして、林道開設記念の石柱と木柱が立っています。(1-4.「林野行政今昔、細見谷渓畔林はこうして残った」参照)
十方山林道の終端部は、国道488号線と接する地点(吉和西)です。
そこから切り通しを越えて主川沿いに下れば、国道186号(中津谷)に至ります。なお、切り通しのすぐ先で左折して、全線開通した大向長者原線を行けば、お関の墓(オセキガ峠)の先で左に沼長トロ山取付きを分け、さらに角兵衛の墓を通り過ぎて国道186号(大向)に至ります。
参考:私の山行記(6)
沼長トロ山は、細見谷渓谷の右岸にあり、同左岸の黒ダキ山と対峙しています。私の初めての沼長トロ山は、インターネットで知り合ったIさんとの2回めの同行登山でした(2005年6月4日)。その時、大向長者原線は完成間近でした。
注:このページは、電子書籍『細見谷渓畔林と十方山林道』アマゾンKindle版(2017年3月6日)の一部です。