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細見谷渓畔林と十方山林道

期中評価委員会(緑資源幹線林道・大朝~鹿野線(細見谷林道を含む))

緑資源幹線林道事業「期中評価委員会」は、緑資源幹線林道事業の事業評価の一環として、林野庁(農林水産省の外局の一つ)が設置しているものです。

前記の「環境保全調査検討委員会」が、細見谷林道問題そのものを対象としているのに対して、「期中評価委員会」は、幹線林道事業全般にわたって、路線ごとに事業の途中経過を評価しようとするものです。つまり、この期中評価委員会は、全国の「緑資源」幹線林道事業全般の定期的な見直しを行うことを目的とした委員会です。

期中評価委員会の評価システムと目的について、林野庁発の文書(平成15年10月24日付け)があり、その内容(一部)は、次のようになっています。

「大規模林業圏開発林道事業について、事業の効果的・効率的な執行及び透明性を確保する観点から、原則として新規着工の翌年度から5年の倍数年目に当たる路線を対象に,社会経済情勢等の変化等を踏まえた事業の期中評価を行っています。この期中評価は、実行中の事業について今後の事業実行の妥当性を検討するものであり、着工中区間の今後の取扱いについて検討することとしています」。(以上引用)

つまり、路線ごと定期的(5年おき)に対象を決めて検討するとしています。なおこれは、時のアセスメント(公共事業の再評価システム)制度の導入を受けて、林野庁において作成された「大規模林道事業再評価実施要領」(平成10年4月1日施行)に基づいて行われるものです。

注:本稿は、山本明正著『細見谷渓畔林と十方山林道』自費出版(2007年)を電子書籍化する準備のために加筆修正しているものです。したがって、その背景は2007年当時のままとなっています。

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期中評価委員会の意見

「大朝・鹿野線」では、2000年12月(平成12)に再評価委員会の意見が出されています。その内容は、戸河内・吉和区間の経緯(廿日市市ホームページ内、緑資源幹線林道事業 戸河内・吉和区間)によれば、「環境保全への配慮等のために、幅員を縮小するなど計画路線一部を変更した上で事業を継続することとする。なお、渓畔林部分については環境保全に十分配慮して事業を実施する必要がある」とされた、となっています。

平成18年度「緑資源」幹線林道事業期中評価委員会は、全国7林業圏域(32路線)の中から、大朝・鹿野線(2回目)を含む6路線を対象に選びました。そして、第4回委員会(2006年8月18日:東京)で結審しました。

大朝・鹿野線については、路線全体としての事業は継続とされたものの、二軒小屋・吉和西工事区間の渓畔林部分及び新設部分については、「現在の計画の不十分さを委員会として認めた」(下記、中国新聞社説参照)結論が出されました。前年度(2005年11月)に出された環境保全調査検討委員会による結論のうち、付帯意見(委員2名)部分と同趣旨と理解されます。

林野庁は、「平成18年度第4回緑資源幹線林道事業期中評価委員会の議事概要について」を公表しています(2006年8月21日付け)。対象となった路線(計6路線)のうち、5、大朝・鹿野線の部分は、次のようになっています。

—(以下引用)

(委員会の意見)
森林の有する多面的機能の発揮、林業・林産業の活動の見通し、地域振興への貢献度等を総合的に判断した結果、次のとおり、戸河内・吉和区間について条件を付すとともに、鹿野区間に計画変更を行った上で、事業を継続することが適当と考える。

戸河内・吉和区間については、林道整備の必要性は認められ、地元の要請も強い一方で、特に渓畔林部分及び新設部分については、自然環境の保全の観点から、さらに慎重な対応が求められる。このため吉和側、二軒小屋側の拡幅部分については、環境保全に配慮しつつ工事を進めることとする。また、渓畔林部分及び新設部分については、地元の学識経験者等の意見を聴取しつつ引き続き環境調査等を実施して環境保全策を検討した後、改めて当該部分の取り扱いを緑資源幹線林道事業期中評価委員会において審議する。

鹿野区間については、事業効果の早期発現や事業費の縮減を図る観点から、路網整備が必要な森林と公道を効果的に結ぶよう線形を変更する。

(評価方針案)
計画変更

—(引用ここまで)

このような条件が付された結論が出されることは大変異例のようです。委員会の意見(計6路線)の中でもきわだって記述分量が多くなっています。期中評価委員会として、細見谷は貴重な存在であるということを示した結果であると言えるでしょう。

中国新聞社説「細見谷林道、宝の活用法再考したい」

2006年8月20日付け「中国新聞」(社説)は、「細見谷林道、宝の活用法再考したい」の中で次のように述べています。

「一昨日の林野庁の「期中評価委員会」は、細見谷を通る幹線林道の整備計画(一三・二キロ)で、渓畔林部分(四・六キロ)と道路新設部分(一・一キロ)について、さらなる環境調査を求め、着工の是非についての結論を来年度以降に持ち越した。現在の計画の不十分さを委員会として認めたのである」。

そして、次のように締めくくっています。「西日本でもここでしか見られない「宝」を、生かす方法はいくらでもありそうだ。歩いて癒やされ、楽しく学習できる自然。従来の観光と違う独自の観光開発も考えられる。それに応じたワサビなどの特産品の生かし方もあろう。初めに道ありき、ではない。最初に自然ありき、で再考したい」。

注:このページは、電子書籍『細見谷渓畔林と十方山林道』アマゾンKindle版(2017年3月6日)の一部です。

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