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人類の誕生と生物多様性
私たち世界中の現代人は、ホモ・サピエンス(Homo sapiens、新人)というたった一つの「種」に分類されている。その新人(現代人)は、10万年前ごろにアフリカで誕生し、6万年ほど前からユーラシア大陸に広がり始めたと考えられている。
新人の誕生は、地球と生物の長い進化の歴史(40億年以上)からすれば、ほんのわずか前の出来事にすぎない。しかしながら、その人類の経済活動の影響を受けて、極めて短期間のうちに多くの動植物がすでに絶滅したり、絶滅の危機に瀕するようになっている。
生物界に最後に登場したヒトの生命は、数え切れないほどの生物たちの相互作用の上に成り立っていることを忘れてはならない。地球規模での環境破壊の進行による絶滅種の増加、すなわち生物多様性の低下は、今やヒトそのものの生存を脅かすまでになっている。
21世紀は環境の世紀
Point of No Return「+2℃」
地球の平均気温が、工業化以前とくらべて「2℃」を超えて上昇するならば、地球の生態系は大打撃を受け、もはや元に戻すことはできないとされている(山本良一編「気候変動 +2℃」ダイヤモンド社(2006年))。
「+2℃」は、人類が決して越えてはならないポイント(Point of No Return)である。WHOは、現在のままの気温上昇が続くならば、2028年にその域に達してしまうと想定している。
人類は、はたして今後の地球環境を守ることができるのであろうか。地球環境問題について、全地球人による〈待ったなしの対策〉が求められている。
ノーベル平和賞(2007年)
ノルウェーのノーベル賞委員会は、2007年度ノーベル平和賞を米アル・ゴア前副大統領(59歳)と「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」に授与すると発表した(2007年10月12日)。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)
「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書第1作業部会報告書(自然科学的根拠)」は、2007年2月1日パリで受諾された。
報告書は、まず第一に「##気候システムに温暖化が起こっていると断定するとともに、人為起源の温室効果ガスの増加が温暖化の原因とほぼ断定##」している。すなわち、地球温暖化の原因は、人類の活動による温室効果ガス(CO2:二酸化炭素など)の増加による可能性が大であり、その確率は9割以上であると結論づけている。
これは、第3次(前回)評価報告書の結論である「可能性が高い」という表現よりも、さらに踏み込んだものであり、限りなく断定に近い表現になったといえる。
不都合な真実(An Inconvenient Truth)
ハリウッドで開かれた第79回米アカデミー賞授賞式(2007年2月25日)で、「不都合な真実(An Inconvenient Truth)」(デイビス・グッゲンハイム監督)が、長編ドキュメンタリー賞など2部門でオスカーを授賞した。
この映画は、米アル・ゴア前副大統領自らが、世界各地で地球温暖化防止を訴えてきた講演会の様子などを基に作られたドキュメンタリー映画で、全世界で反響を呼んだものである。
なお、アル・ゴア氏の大邸宅では、ノーベル賞受賞後、急遽省エネルギー対策をとっている。米国をはじめとするエネルギーの大量消費社会こそ、地球温暖化の最大の要因である。
生物多様性基本法(2008年6月施行)
生物多様性基本法
生物多様性基本法は、わが国初の生物多様性保全を目的とした基本法として2008年6月に施行された。本基本法の目的は、「平成21年版 環境・循環型社会・生物多様性白書(環境省編)」の語句説明「生物多様性基本法」によれば、
生物多様性の保全及び持続可能な利用について基本原則を定め、国、地方公共団体、事業者、国民及び民間の団体の責務を明らかにするとともに、生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する施策の基本となる事項を規定した法律。生物多様性に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、生物多様性から得られる恵沢を将来にわたって享受できる自然と共生する社会の実現を図り、あわせて地球環境の保全に寄与することを目的とする。
となっている。
環境影響評価(環境アセスメント)
生物多様性基本法は、「事業者の責務」について次のように述べている。
第六条 事業者は、基本原則にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、事業活動が生物の多様性に及ぼす影響を把握するとともに、他の事業者その他の関係者と連携を図りつつ生物の多様性に配慮した事業活動を行うこと等により、生物の多様性に及ぼす影響の低減及び持続可能な利用に努めるものとする。
法の適切な運用が望まれるところである。
1993年8月号P.06
環境アセスメント制度に異議あり
「環瀬戸内海会議」立木トラスト事務局長
船木高司