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細見谷渓谷遡行:立野キャンプ場~十方山林道(第1回目)(2009/08/23)

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細見谷渓谷遡行(第1回目)
立野キャンプ場~イカダ滝~V字滝~オオリュウズ~山の神(祠)
(出発:立野キャンプ場、帰着:押ヶ峠(十方山林道))

2009年08月23日(日)、Haさん

写真日付exif間違い(2008年となっている)。

詳細版
⇒細見谷渓谷遡行(第2回目)、2010年8月22日(土)

細見谷渓谷遡行:立野キャンプ場~十方山林道(第2回目)(2010/08/22)

このページの目次です

はじめに

長年の念願がやっとかない、細見谷渓谷(細見谷下流部)遡行をしてきた。
ここ数年随分とお世話になっているHaさんのお誘いを受けて実現した山行である。
(パーティー人数2人)

なお、細見谷川〈上流部〉は、細見谷渓畔林に覆われており生物多様性の宝庫となっている。
そして、細見谷川の右岸沿いを十方山林道(二軒小屋~吉和西)が走っている。

今日のコース&コースタイム

立野キャンプ場7:25~橋7:26~(下山林道)~堰堤上部から入渓7:32~一の谷8:39~二の谷9:44~イカダ滝10:34~V字滝10:56~オオリュウズ11:05~大堰堤手前14:08~祠(山の神)14:20~(十方山林道)~押ヶ峠15:30

  • 立野(3時間40分)オオリュウズ
  • オオリュウズ(3時間15分)祠
  • 祠(1時間10分)押ヶ峠
  • 総合計8時間05分(昼食そのほか、途中休憩を全て含む)

本コースのコースタイムは、諸書によって、6~7時間あるいは7~8時間とされているようである。
歩く速さそのものに加えて、谷通し(時々泳ぐ)で行くか高巻くかによって必要とする時間は異なってくる。

今日の私たちはほとんど泳がなかった。
大きく高巻いたのは4箇所(いずれも右岸)で約7時間かかった。
(昼食タイムそのほか全てを含む)。

なお、オオリュウズを乗り超えた辺りで、距離的には中間点やや手前ではあるが、気分的には全体の半分から2/3消化したと思ってよいであろう。
しかし、後半部分の1/3も気力・体力が低下してくることを考えると決してあなどれない。

今日は、先導者に必死でついて行くのが精いっぱいであった。
記録としては、オオリュウズまでの写真とそれに刻まれた時刻しかない。
後半部分はシャッターすらほとんど押していない。

写真日付間違い(2008年となっている)。

以下では、桑原良敏著「西中国山地」からの引用を中心として、思いだせる範囲でまとめておくことにする。
なお、引用部分では適宜改行を加えさせていただいた。

なお、この山行記は、「森と水と土を考える会」2009年9月号に掲載していただいた。
ただし、記憶のあいまいな部分があり、適宜修正しているので、最終正式版は本ページのものとすることをお断りしておく。
(最終確認日、2010/09/01)

  • 桑原良敏『西中国山地』溪水社(1982年、1997年復刊)
  • 山歩きのページ(Kさん)
    http://yamaaruki.sakura.ne.jp/index.html

立野キャンプ場を出発する


〈写真〉立野キャンプ場、7時24分(出発25分)

谷の入り口右岸に施設の完備した立野キャンプ場がある。前夜ここに泊り、翌朝谷へ入るが、下流部渓谷を抜けてから、二軒小屋まで行くにしろ、吉和中津谷へ帰るにしても、かなり歩かなければならないので入谷は早いにこしたことはない。

桑原良敏「西中国山地」p.111

私たちは、広島市内某所を午前5時に出発する。
車2台を使用し、一台を十方山林道の押ヶ峠手前にデポ。

注)二軒小屋:現・広島県山県郡安芸太田町横川二軒小屋
十方山林道(二軒小屋~吉和西)の起点である。

堰堤上部に出る

入口の橋(Web作者注、立野キャンプ場西側)より河原に降りる。渓の幅も広く浅い徒渉をくり返して行くと小さな堰堤がある。

桑原良敏「西中国山地」p.111


〈写真〉立野キャンプ場西側の橋、7時26分

私たちは、キャンプ場からすぐに入渓はしなかった。
キャンプ場横の橋(標高530m台)を左岸に渡り、一旦下山林道に入る。

下山林道(未舗装)は、細見谷下流部渓谷左岸沿いに造られた林道である。
現在は廃道となっており荒れてはいるが歩くことはできる。
細見谷渓谷遡行途中で引き返すときに利用することもできる。

さて私たちは、下山林道に入りしばらく行く。
ツリフネソウ・ロードである。
対岸にはアマゴ養殖場がみえる。

やがて、はっきりした踏み跡をたどり河原に下りる。
堰堤の上流部(標高530m台)である。
何の変哲もない河原が広がっている。


〈写真〉入渓(堰堤上流部)、7時32分

最初のゴルジュを高巻く

これ(Web作者注、堰堤のこと)を過ぎると渓谷らしくなって、谷は右に曲がる。やがて最初のゴルジュにつきあたる。両岸の岸壁がせまり、長い淵が続いて、その奥に小さな滝が落ちている。

この淵の通過は始め右岸を進み、腰から腹部、胸まで浸って左岸に取りつき少しへつって右岸に渡り返すのであるが、盛夏でも水の冷たさはこたえる。以後こんな深場の徒渉はない。

水に入りたくない場合は高まきということになるが、右岸を小さくまくか、少し引き返して左岸を大きく高まくとよい。右岸を大きくまくとガレにつきあたりザイルがないと谷へ降りられなくなる。

桑原良敏「西中国山地」p.111-112

河原はやがて淵に変わり、まずは左岸で少しへつる。
岸部の岩盤が長年月の間にけずられて、手がかり足がかりになるような凹凸ができている。
そこをうまく伝って行く。


〈写真〉淵を行く、7時35分

〈写真〉左岸の浅瀬を行く、7時50分

〈写真〉最初のゴルジュ、7時52分
(右岸を高巻く、詳細は下記にて)

私たちは、最初のゴルジュを手始めに、前半部分(オオリュウズを越えたところの「休み場」まで)で三箇所、後半部分で一箇所、合計四箇所で、いずれも右岸をかなり高く巻いて行った。
これら高巻く場所では、沢は右手はるか下にみえている。足元がずり落ちそうで高所恐怖症の私にはつらい。

さて、最初のゴルジュの高巻きでは、最後に渓谷に向けて真っ逆さまに下る。
ロープが設置してあるものの、やや古く少し頼りなさそうである。

Haさんが持参のロープを取り出す。
彼が下の足場まで下りたことを確認してそれに続く。
私の足があと少しで着地するかなと思った瞬間、ロープで身体を大きく振られてしまい、ややあわてる。

細見谷渓谷~下山林道の踏み跡

なお、この最初のゴルジュを抜けた辺り(ゴルジュよりも上流部)に、下山林道から踏み跡が下りているようである。
すなわち、以下のとおりである。

一ノ谷へ降りるカーブミラーの地点(Web作者注:標高610mくらい)から、さらに北向きに50mほど林道を歩くと、小谷に大きなトチノキがあり、そこから下る。

山歩きのページ(Kさん)の各山行記(2005/6/19、2004/7/17、2001/9/24)
http://yamaaruki.sakura.ne.jp/index.html

(立野から)20分ほど(下山林道を)歩いて、一ノ谷へ降りるカーブミラーを過ぎると、小谷に大きなトチノキがある。

その横を通って谷へ降りる踏み跡がある。オオリュウズを目指す釣り人はここから降りることが多い。この踏み跡は一ノ谷上流のゴルジュを抜けた辺りへ降りる径である。(カッコ内、Web作者加える)

山歩きのページ(Kさん)、2006/8/12山行記

(カーブミラーから北向きに200mくらい行った地点からの踏み跡もあるか?)


〈写真〉一の谷落ち口手前、左岸をへつる。8時30分

一の谷落ち口付近を行く

一の谷落ち口付近は転石が多く、見上げると一の谷の小滝が見える。ここは小休止するによい場所である。また左岸の林道よりここへ降りる踏跡がある。

桑原良敏「西中国山地」p.112


〈写真〉一の谷落ち口(右岸)、8時41分(39分着)
(二人して交互に記念写真をとる。まだ余裕がある)

一の谷落ち口(細見谷渓谷右岸)の対面上部(細見谷渓谷左岸)を下山林道(立野キャンプ場始点)が走っている。
林道上のカーブミラー(標高610mくらい)のところから渓谷(一の谷落ち口)へおりる踏み跡があるらしい(既述)。
次回からこうした踏み跡もさぐってみることにしよう。

第二のゴルジュを高巻く

本流は更に大きく右へ曲り、第二のゴルジュと長くて深い淵に出会う。両岸の岸壁は手掛かりがなく谷通しに行くには泳ぐ以外どうしようもないが、幸い右岸をかなり高くまく踏跡がある。

以後大体渓の中を歩くことができるが高まく必要の所は右岸を注意すれば踏跡が見つかる。

桑原良敏「西中国山地」p.112

二の谷落ち口に大滝をみる

やがて左岸、はるか上よりナメラ状の滝〈テンガタキ〉が現われ、50m先の右岸に〈二の谷落ち口の大滝〉が現れる。左岸よりクロダキノ谷の水流が出ている付近より谷は更に狭くなり、この峡谷の核心部となる。

桑原良敏「西中国山地」p.112

谷(Web作者注:第二のゴルジュ上流部)へ降りてから40分ほどでテンガタキ。テンガタキは細見谷左岸の真上から降りる小さな滝である。

天から降ってくる滝の意と思っていたが、アイヌ語に tem-ka-taki テム・カ・タキ 「両腕の幅の・上の・岩崖」の意がある。呼び名の通り、幅の狭い懸崖である。両腕を広げると、ちょうどこの滝の落口の広さになる。対岸に渡ると、上部にある小さな滝を見ることができる。(中略)

テンガタキのすぐ先に二ノ谷の滝がある。テンガタキからいつもは落ちる飛沫が見えるのだが、やはり水量が少ないのか見えない。

山歩きのページ(Kさん)、2006/8/12山行記


〈写真〉二の谷落ち口の大滝(右岸)、9時45分(44分着)

イカダ滝にぶつかる

左岸の水面近くにある足場を伝わって進むと谷は直角に右折し暗くなる。奥に〈イカダ滝〉と深い淵が見える。この滝と淵の通過が峡中の最も困難な所である。昔はここで筏を作り、それにのって滝下まで進み、滝をよじ登ったというので、この名が付けられている。

多くのパーティは渕尻の左岸の崖を登っている。しっかりしたホールドや木の根もあるが岩登りをやったことのない人はザイルで確保してもらった方が安全である。インターハイの時は、ここに縄梯子がセットされていた。

桑原良敏「西中国山地」p.112

この下流部渓谷は昭和五十二年の高校総体(インターハイ)の折、コースとして使われた。十八地点にザイルや縄梯子が固定(フィクス)されたが、現在はその跡も定かでない。

桑原良敏「西中国山地」p.110


〈写真〉イカダ滝、10時34分

イカダ滝は泳がなければいけない、と聞いていた。
しかし、淵に大量の砂が流れ込んで浅くなっており、難なく淵の中を歩くことができた。

イカダ滝の右岸を高巻く

この崖を登る自信のない場合は、略図(Web作者注、筏滝周辺p.113)の右岸の草付きのガレを登ることになるが手がかりのない急な斜面である。

これも無理だとなるとクロダキノ谷(Web作者注、落ち口は細見谷左岸にある)まで引き返しこの谷を登る。大きな滝があり滝の手前の左岸の急な斜面を灌木につかまりながら登るとよく踏まれた旧道に出会う。

この旧道がクロダキノ谷を渡った所がテント場になっている。樹下のササに覆われた径を、注意して見失わないよう追っていくと、尾根を越し、五回ほどジグザグをえがいて下るとイカダ滝のすぐ上流にあたるホトケ谷落ち口(Web作者注、細見谷左岸)に出る。

桑原良敏「西中国山地」pp.112-113

イカダ滝から右岸を戻り、ガレを登り、踏み跡を降りていくとホトケ谷の落口に出る。そこから下流へ細い水路がイカダ滝へ落ちている。

山歩きのページ(Kさん)、2006/8/12山行記

イカダ滝を確認して右岸を少し戻り高巻く(上記の桑原とKさんのいう右岸高巻きルートである)。

最初は直登である。
「登り始めのところは最初、少しだけロープがありましたが、後は立ち木を頼りに、ざら場の急な登りを上がった(今日の同行者Haさんのコメント)」。

左手に力が入らない。
しばらく前に左の脇腹を打っており痛む。
何とか前に進みたい一心で這い上がる。

なお、上記のテント場(クロダキ谷)へは、下山林道から直接おりることができる。
私が細見谷渓谷遡行に具体的な興味を持ち始めたころ、そのルートをたどって細見谷渓谷(ホトケ谷落ち口)をさぐったことがある。
(2006/09/30、2005/11/26)

V字滝の頭からオオリュウズを高巻く

これ(Web作者注、ホトケ谷落ち口)より本流にV字形に落ちている小滝が見える。

滝の左岸を登り、滝の頭をすぐ右岸に渡った所に〈オオリュウズ〉を高まく踏跡の取りつきがある。この踏跡はかなり高まくので峡中で一番大きな滝を見ることができないまま滝の頭の河原に出る。

岩登りに自信のある人は〈オオリュウズ〉を登っている。右岸より取り付き、滝の中程で流水をあびながら左岸へトラバースして左岸の壁を登る。残置ハーケンが要所に打ってあるが水量の多い時は難しい。

滝の上はかなり広い転石の多い河原で休むには格好の場所である。これより上流には悪場はなく核心部を抜けた安堵感で、大休止したり、昼食を取ったりするパーティが多い。

桑原良敏「西中国山地」p.113

V字滝の左岸を渡り、V字滝の頭を通り、上部のオオリュウズに出る水路の右岸を進む。

山歩きのページ(Kさん)、2006/8/12山行記


〈写真〉V字滝、10時58分

ホトケ谷落ち口から直接V字滝が見えたかどうか、定かではない。

2006/09/30山行記(下山林道から直接ホトケ谷落ち口に向けて下った)では、「細見谷本流の岩の上に立つ。右手(下流)の筏滝も左手(上流)のV字滝も見えない」としている。
(注:右手、左手はホトケ谷落ち口に向かって立った場合を示す)


〈写真〉オオリュウズ、11時05分

V字滝の頭からオオリュウズの水流を堪能した後、右岸を高巻きオオリュウズを越えて行く。
右手に谷底を見ながら滝上部を越え、滝の上流部にずり落ちる。

そこが「休み場」になっている。
これで今日の核心部分は終わり、ほっと一息つく。


〈写真〉休み場、11時20分

前・中・奥フトウを行く

これから上流は渓の中を歩く。左岸〈マエフトウ谷〉の落ち口は4m位の小滝で少しばかり水が落ちている。〈ナカフトウ谷〉の右岸は転石の多い河原である。〈オクフトウ谷〉を過ぎた所に淵があり、これを過ぎると左岸にササに覆われた平坦な段丘がある。この場所も整備すればテントが張れる。(Web作者注、落ち口はいずれも左岸にある)

桑原良敏「西中国山地」p.113

オオリュウズを過ぎてしばらく進むと、前フトウ谷がある。岩崖を水流が落ちているが、対岸から見ると、谷の様子が見える。
前フトウ谷のすぐ先にあるのが中フトウ谷。水量は僅かである。
中フトウの先に渕があり、左岸に釣り人が吊るしたロープがある。
その先にあるのが奥フトウ谷。

山歩きのページ(Kさん)、2006/8/12山行記

「これから上流は渓の中を歩く」(上記桑原)平凡な谷と聞いていた。
それでも、細見谷渓谷である。
前進できない淵があり、左岸ロープを頼りによじ登る。

なお、この淵が、「〈オクフトウ谷〉を過ぎた所」(上記桑原)のものか、「中フトウの先に渕があり、左岸に釣り人が吊るしたロープがある」とKさんがいう淵なのか、記憶があいまいである。

最後の高巻き(4番目)、そして水泳

この前後(場所があいまい)で、右岸から高巻く箇所がある。
途中で谷が切れ込んでおり注意して渡る。
この四番目の高巻きが最後である。
後は安心して歩けるはずだった。

ところがついに、泳がざるを得ない場面がやってきた。
まず、先頭のHaさんは、右岸から岩場を越えてその向こうの浅瀬に飛び降りた。
私は左胸が痛む。
岩場をうまく確保できない。
しかたなく、淵まで引き返して泳ぐ覚悟をする。
カエル泳ぎである。
数回水をかいて淵を渡る。
水につかると結構体力を使うものである。

S字ゴルジュを行く

〈カンネワラノ谷〉を過ぎるとS字型になったゴルジュがある。以後谷は開け、平凡な渓谷となる。

桑原良敏「西中国山地」p.113

水量が多くS字ゴルジュを渡れない時は左岸の崖に踏み跡がある。S字ゴルジュを過ぎると、谷は平凡になる。途中、岩盤に丸い穴が開いて、その中に小石が詰まっていた。ロクロ谷の落口付近から細見谷は90度北へカープする。

山歩きのページ(Kさん)、2006/8/12山行記

この前後の淵で、Haさんが釣り糸をたれた。
釣果は全くなしだった。
以前Haさんが釣りをしていた十数年前には、淵に入るとすぐに数匹の魚が足もとに寄って来たものだという。

出発前に立野で会ったおじさんは、「今でもゴギがいる所にはいる」とはいっていたが、魚の絶対数そのものが激減しているのであろう。
今日私が目で確認したのは、この前後の淵で、十数匹が群れて反時計まわりに回っているのをみただけである。
Haさんによれば、体長15cmくらいだろうという。

写真(場所、未特定)


〈写真〉、12時27分


〈写真〉、12時50分


〈写真〉、13時07分


〈写真〉、13時21分

堰堤につきあたる(祠の下)

更に渓を歩いていると堰堤につきあたる。堰堤のすぐ上流に〈押ヶ谷〉が右岸より落ちており、そこに小径があってこれを登ると十方林道の小祠のある所に出る。

桑原良敏「西中国山地」p.113

〈写真〉大堰堤、14時08分

大堰堤の全面を一様に水が流れ落ちている。
ここまで来ると後はもう少しである。

標高700mくらいから標高差40mくらいをひと踏ん張りすれば、十方山林道の山の神(祠)に登りつく。
そこは幾度となく通った場所である。
見慣れた光景にやっと安心感が漂う。
それにしても、祠の横の大木が崩れ落ちているのが痛々しい。

さて、帰りをどうするか

横川までは更に三時間歩かねばならない。

吉和へ出るには十方林道を歩くよりか、途中からロクロ谷(Web作者注、細見谷渓谷右岸)へ入り小さな鞍部を越し、セギガ谷の林道に出て、オセキガ峠を越してオオマチ谷の林道を歩いて大向へ出た方が早い。

出発点の立野キャンプ場へ帰るには、オセキガ峠を越し、角兵衛の墓の手前よりヒノ谷の小径を下るとよいが、これは茂っているかも知れない。ヒノ谷には目下入口より林道が作られつつある。

桑原良敏「西中国山地」p.113

桑原は、山の神(祠)から横川まで十方山林道を歩いて3時間としている。
そして、横川と反対方向の吉和に向かう場合には、十方山林道を行くのは遠回りになるので、ロクロ谷を行くのが良いとしている。

ロクロ谷、ヒノ谷など、細見谷渓谷の小谷については、山歩きのページ」(Kさん)の各山行記が大いに参考になるであろう。
いずれそのうちの一つでも歩いてみたいものである。

注)横川:広島県山県郡安芸太田町横川
横川(大字)の二軒小屋は、十方山林道(二軒小屋~吉和西)の起点である。

押ヶ峠まで帰り着く

今日の私たちは、車一台を押ヶ峠近くにデポしている。
祠(山の神)から、吉和方面に向けて、十方山林道を押ヶ峠の少し先まで歩く。
道端にも意外と見るべき植物が多い。

押ヶ峠に帰り着く手前で、小雨がぱらついてきた。
立野からの帰りに少しワイパーを動かした。
今日は終日、曇り~晴れの天気予報、山の天気は難しい。

それでも良好なコンディションの中で細見谷渓谷を突破することができた。
長年の懸案事項を解決できて大大満足。
Haさんありがとう。


ヘルメット着用
ほかのパーティ、オオリュウズをピストン、大山剣が峰の話など
ズボン裂ける、アブ多し(ほかのパーティにはいない?)
ヘルメット強打、胸を打つ、そのほか打ち身あり

参考までに、私の過去の敗退記録を抜き出しておきます。

  • 2006年09月30日(土)、単独
    細見谷渓谷探索(下山林道~クロダキ谷~ホトケ谷)往復
    下山林道経由で下る。
    2005/11/26(土)とほぼ同じコースをたどり、細見谷渓谷(イカダ滝~オオリュウズの間)に降り立つことには成功した。
    ただし、その場から一歩も動くことができず引き返す。
    (出発帰着:立野キャンプ場)
  • 2005年11月26日(土)、単独
    1)黒ダキ山(ナガ谷へのトラバース道)敗退
    2)細見谷渓谷探索(イカダ滝、オオリュウズ付近)
    下山林道から細見谷渓谷をめざすが、沢のそばまで至ることなく敗退
    (出発帰着:立野キャンプ場)

細見谷とは

細見谷は、上流部と下流部に区別される

細見谷は、広島県廿日市市吉和の最奥にある谷で、そこを細見谷川が流れています。具体的な場所は、広島・山口・島根三県境付近から、広島・島根県境尾根(五里山~恐羅漢山)が北東に延びている南側(広島県側)になります。流域に人家や田畑は全くなく、西中国山地最奥の谷となっています。

細見谷川は、広島・島根県境尾根と十方山・南西尾根にはさまれた狭間に端を発します。南西に向けた流れは途中で左折して、十方山系の南西側を東向きに流れ下ります。つまり、細見谷川は、十方山系の周りを反時計回りに、北西側(上流部)から南西側(下流部)にまわる流れとなっています。

細見谷川は、このように上流部と下流部に区別することができ、それぞれに趣の異なる渓谷となっています。

桑原良敏は、細見谷上流部について、その著書「西中国山地」で次のように書いています。

上流部は、この山地特有の北東―南西の断層線に沿って刻まれた緩い流れの直線谷で、所どころに段丘が残っている。昭和二十年代までは、イヌブナ、サワグルミ、トチを主体とした巨木の茂っていた無人境だったが、現在、上流の一部を除いて皆伐されてしまった。

桑原良敏「西中国山地」p.110

細見谷林道問題(十方山大規模林道化問題)とは

20090811_122930.jpg

細見谷川の上流部両岸は穏やかな傾斜となっており、そこに美しい水辺林が発達しています。これを細見谷〈渓畔林〉といいます。渓畔林そのものは、周辺部の谷の大半が皆伐されたため、川沿いに100~200m幅(長さ約5km)で残っているにすぎません。

上記写真は「細見谷川」上流部、ワサビ田付近、2009年8月11日撮影

20090811_111806.jpg

このわずかに残された渓畔林に対して、西日本随一の生物多様性の宝庫として、日本生態学会がその保護を求めるなど、最近非常に評価が高まってきています。

2009年8月11日撮影(写真右)

20090811_121242.jpg

十方山林道(細見谷林道)は、この渓畔林を貫いて、細見谷川沿いに50年以上前に建設された林道(未舗装、幅員3~4m)です。その林道を〈拡幅舗装化〉する計画が進められています。

2009年8月11日撮影(写真左)

私の所属する「森と水と土を考える会」では、

  • この工事はそもそも何のために行うのか、その必要性はあるのか
  • 渓畔林など自然環境に与える影響は、ほんとうに軽微なのか

疑問であるとして、自ら植物調査等を繰り返しつつ、その建設に反対する運動を続けています。

工事はまだ中止と決まったわけではない

工事主体の独立行政法人・緑資源機構(元の森林開発公団、農林水産省所管)は、2007年5月24日、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑による逮捕者を出すなどして、翌年3月31日に廃止されました。

しかし、大規模林道工事そのものが廃止されたわけではありません。国は新たに「山のみち地域づくり交付金」というものをつくり、道・県に事業を移管することにしています。広島県において、それを受け入れるかどうかの決定は延び延びになっており、事業の継続あるいは中止の方針はまだ広島県からは何ら示されていません。

細見谷渓谷とは

細見谷下流部の"細見谷渓谷"は、その左岸上部の下山林道(立野キャンプ場起点)が建設途中で中止されたため、拡大造林による皆伐をかろうじてまぬがれています。その結果、まわりに人工林は全くなく、人々を寄せ付けないほど厳しく変化に富んだ渓谷美を今でも誇っています。

参考資料

桑原良敏著「西中国山地」溪水社(初版1982年)、(黒ダキ山)P.109-113

「日本百名谷」白山書房(1983年)にも選ばれているこの渓谷について、桑原良敏は、その著書「西中国山地」のなかで次のように述べています。

下流部(細見谷渓谷)は断層線(細見谷上流部)に直交する方向に貫入曲流したV字状の渓谷で、両岸から本流へ流入する小谷の落ち口付近には必ずと言ってよいほど滝があり、侵食の激しいことを物語っている。また本流の両岸は岩壁となっており、二万五千分の一図の毛虫記号の多さにも驚かされる。(カッコ内はWeb作者追記)

桑原良敏「西中国山地」p.110

ちなみに、中国地方で「日本百名谷」に選ばれているのは、細見谷以外では伯耆大山(甲川)のみです。

なお、細見谷川は立野で太田川に合流してさらに左折、十方山南東側の立岩ダム(竜神湖)を通って北東にゆき、柴木川(三段峡)を吸収して南向きに広島市内から瀬戸内海へ注ぎます。つまり、細見谷川は、太田川の源流の一つであるといえます。

宇部山岳会/細見谷遡行記録

宇部山岳会/山行報告/細見谷遡行 2009/7/5
宇部山岳会5名による本格的沢登りであり、適切な写真配置でコース概要がわかりやすい。また、別途リンクファイルに、"細見谷テクニカルノートをPDFで見る"があり、より詳しいルート解説がなされている。(深い淵は泳ぎ、滝はそのまま突破している)

山歩きのページ/山歩きの履歴/"K"さん

桑原良敏著「西中国山地」(初版は1982年刊)片手に、「西中国山地」にある数多くの谷、尾根そして古道をていねいに踏破されている”K”さんのHPです。常に単独で歩く一日の行動範囲は常人の2倍以上、恐るべき健脚ぶりです。(各山行記下段にGPS軌跡が掲載されており非常に便利)

以下では、山歩きのページ("K"さん)の「細見谷渓谷部分」を参考までにご紹介します。

  • 2006/8/12
    立野~(下山林道)~細見谷渓谷~(十方山林道)~カネヤン原~タキワケ谷(細見谷上流部左岸)~「黒ダキ山」~立野
  • 2005/8/27
    立野~下山林道(テンガタキ谷~黒ダキ山取りつき~右カーブ地点)~ホトケ谷(細見谷下流部左岸)~細見谷渓谷(V字滝、オオリュウズ)~ロクロ谷(細見谷下流部右岸)~長者原林道(お関の墓、角兵衛の墓)~(女鹿平山の北側へ向けて左折)~アオザサ谷~ヒノ谷~立野
  • 2005/6/19
    瀬戸谷入口駐車場~セト谷(瀬戸滝~セト谷~右谷)~バーのキビレ(十方山南西尾根最低鞍部)~クラガ谷(細見谷上流部左岸)~(十方山林道)~山の神(祠)~細見谷渓谷(祠から下り、核心部分を通り抜け、二ノ谷、テンガタキを過ぎ、一ノ谷北側のゴルジュ帯手前まで)~下山林道(細見谷下流部左岸上部)~立野~瀬戸谷入口駐車場
  • 2005/2/12
    吉和公民館~「女鹿平山」~青笹越~ヒノ谷分岐~「沼長トロ山」~細見谷下流部右岸尾根(A峯~1023m)~細見谷渓谷(イカダ滝上部つまりV字滝・オオリュウズの下側)を渡る~ロクロ谷(細見谷下流部左岸)~下山林道~立野~県道296号線~吉和公民館
  • 2004/7/17
    立野~下山林道(一ノ谷へ降りるカーブミラーの地点。さらに50mほど林道を歩くと大きなトチノキがある。ここから谷へ降り、一ノ谷上流のゴルジュ帯を過ぎたところに出る)~細見谷渓谷(最上部まで)~十方山林道(祠~カネヤン原~下山橋)~クロミ谷(細見谷上流部左岸)~「十方山」~十方山南尾根コース~瀬戸谷入口駐車場~立野
  • 2004/6/24
    立野~下山林道(テンガタキ谷~黒ダキ山取りつき~右カーブ地点)~ホトケ谷(細見谷下流部左岸)~細見谷渓谷(V字滝、オオリュウズその他)~ロクロ谷(細見谷下流部右岸)~長者原林道(お関の墓、角兵衛の墓)~ヒノ谷~立野
  • 2004/6/5
    立野~細見谷渓谷~ロクロ谷落ち口(細見谷下流部右岸)まで登る。そこから、十方山南西尾根(細見谷下流部左岸)に取りつき~「黒ダキ山」~下山林道(細見谷下流部左岸上部)~立野
  • 2004/4/4
    瀬戸谷入口駐車場~セト谷(瀬戸滝~セト谷~中ノ谷)~下山林道(十方山南西尾根)~五月谷(細見谷上流部左岸)~(十方山林道)やや下流へ~「京ツカ山」登り降り(トリゴエ谷、細見谷上流部右岸)~(十方山林道)~細見谷渓谷(祠から入る、オオリュウズを経て、ホトケ谷落ち口まで下る)~下山林道(細見谷下流部左岸)~立野~瀬戸谷入口駐車場
  • 2001/9/24
    立野~下山林道~細見谷渓谷(おそらく、下山林道から一ノ谷上流のゴルジュ帯を過ぎたところに下りている、そこから最後まで登る)~十方山林道(祠、下山橋、水越峠)~「十方山」(シシガ谷コース)~十方山南尾根コース~瀬戸谷入口駐車場~立野